#14 ナンパの練習
浦見「どうも、浦見みぎりです」
淀川「淀川水面です」
浦見「今日のお便りは、ラジオネーム【暇人28号】さん」
淀川「前に俺が考えたラジオネームだな」
浦見「しつこくナンパされて困っている女性を、カッコよく助けられるようになりたいです。どうすれば良いでしょうか?」
淀川「俺に聞かれても困る」
浦見「これは言葉で説明するよりも、実演した方が良さそうですね」
淀川「は?」
浦見「私がナンパする男を演じるので、水面さんは女性を助けて下さい」
淀川「え? 何これ? 何が始まったの?」
浦見「うるさいです。言われた通りにして下さい」
淀川「まぁ、別に良いけど」
浦見「……………………………………ナンパのやり方、知ってます?」
淀川「知らねぇよ」
浦見「困りましたね」
淀川「『君、可愛いね。一緒に遊ぼうよ』とか言えば良いんじゃね? 分かんねぇけど」
浦見「……まずはナンパの練習をすべきですね」
淀川「ナンパの練習?」
浦見「彼(か)を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず、と言うでしょう」
淀川「俺もお前もナンパした事ないから、彼を知る事出来なくね?」
浦見「……細かい部分は、想像で補いましょう」
淀川「適当だな……」
浦見「まずは水面さんがナンパする男を演じて下さい。私が嫌がる女性を演じます」
淀川「うい」
浦見「では、スタートです」
淀川「……君、可愛いね。一緒に遊ぼうよ」
浦見「……ちょっとだけですよ」
淀川「いや拒めよ。嫌がれよ」
浦見「す、すいません。間違えました」
淀川「じゃあ、もう一回やるぞ」
浦見「は、はい」
淀川「……君、可愛いね。一緒に遊ぼうよ」
浦見「け、結構です」
淀川「三〇分だけで良いから。お願い」
浦見「……本当に三〇分で帰りますからね」
淀川「だから拒めって」
浦見「わ、私は悪くありません。水面さんの乞食としてのポテンシャルが高すぎるんです」
淀川「全然嬉しくねぇ……」
浦見「そもそも、ナンパ師がいる場所を私一人で歩かせないで下さい」
淀川「お前こそ、ナンパ師の誘いに乗るなよ」
浦見「ナンパ師が水面さんじゃなかったら付いて行きません」
淀川「俺、ナンパなんかしねぇよ」
浦見「そもそものキャスティングに問題があったという事ですか」
淀川「気付くの遅くね?」
浦見「では、私がナンパ師になります。水面さんはナンパされる側を演じて下さい」
淀川「うい」
浦見「という訳で、スタートです」
浦見「お兄さん、一緒に遊びましょうよ」
淀川「……まぁ、ちょっとだけなら」
浦見「拒んで下さい」
淀川「す、すまん。間違えた。もう一回頼む」
浦見「ちゃんとして下さい。テイク2、いきますよ」
浦見「お兄さん、一緒に遊びましょうよ」
淀川「結構です」
浦見「……」
淀川「なぜ睨む?」
浦見「別に。あしらい方が慣れているなと思っただけです」
淀川「そうか? 何となくやってみただけだけど」
浦見「よく声を掛けられるんですか?」
淀川「まぁ、それなりに」
浦見「……いつ、どこで、誰から、どんな風に誘われるんですか?」
淀川「夜の繫華街で厚化粧のおばさんに『マッサージスル? キモチイイヨ?』って言われる」
浦見「それはナンパじゃなくて客引きです」
淀川「結局、相談には答えられなかったな」
浦見「こういう時もあります」
淀川「こういう時ばっかりになりそう」
『殺したガールと他殺志願者』ラジオSSまとめ MF文庫J編集部 @mfbunkoj
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