#13 女の子からの頼み事。やりがいありませんか?

浦見「どうも、浦見みぎりです」

淀川「淀川水面です」

浦見「今日のお便りは、ラジオネーム【オールナイトニッポンいつも聴いてます】さんから」

淀川「オールナイトニッポンに送れ」

浦見「今週の星座占い、見逃してしまいました。結果を教えて下さい」

淀川「自分で調べろ」

浦見「自分で調べるまでもない些末な事だから、貴方に調べさせるんですよ」

淀川「俺はパシリじゃねぇぞ」

浦見「安心して下さい。パシリ、似合ってますよ」

淀川「嬉しくねぇから」

浦見「つべこべ言ってないで、早く調べて下さい。職務怠慢ですよ」

淀川「星座占いチェックは俺の職務じゃねぇ」

浦見「職務放棄ですか」

淀川「そもそも職務じゃねぇんだよ」

浦見「じゃあ、やりがい搾取です」

淀川「せめてやりがいを作れ」

浦見「女の子からの頼み事。やりがいありませんか?」

淀川「………………言っとくけど、やりがい搾取って悪い事だからな」

浦見「悪い事は楽しいです」

淀川「悪い考え方だ……」

浦見「早く調べて下さい。悪質な嫌がらせをしますよ?」

淀川「その表現、よく聞くけど、逆に良質な嫌がらせなんかあるのか?」

浦見「なるほど。確かに、嫌がられている時点で既に悪質な気はしますね」

淀川「本人の心象的にはマイナスだけど、実は有益な行為、とかかな」

浦見「募金ですね」

淀川「違うわ」

浦見「募金は無益だと?」

淀川「そっちじゃない。お前の『募金はマイナスだ』というマインドが問題なんだ」

浦見「プラスだと言いたいんですか?」

淀川「……くそっ。この場だけでも嘘吐こうと思ったけど、無理だ」

浦見「つまり、良質な嫌がらせの代表例は【同町圧力による望まない募金の強要】ですね」

淀川「うわぁ。しっくりくる……」

浦見「他に何かありますかね」

淀川「もう止めよう。星座占いしよう。俺、調べるから」


――二分後。

淀川「お前、さそり座だったよな?」

浦見「はい」

淀川「今日の順位、八位だ」

浦見「面白くないです」

淀川「俺に文句を言うな」

浦見「他には何も書いていないんですか?」

淀川「……意中の相手からプレゼントがもらえるかも。素敵な出会いを求めている場合は、今日がチャンス。インスピレーションを大切に。だってさ」

浦見「……恋愛占いですか?」

淀川「た、たまたま選んだのがこれだったんだよ」

浦見「意中の相手がプレゼントをくれるんですね。楽しみです」

淀川「やべぇ。どうしよう……」

浦見「ちなみに水面さんは、うお座は何位ですか?」

淀川「九位だ」

浦見「私の勝ちです」

淀川「八位と九位なんかほぼ一緒だろ」

浦見「トーナメント戦だったら、ベスト8とベスト16ですよ。全然違います」

淀川「星座占いは最下位でもベスト12だよ」

浦見「他には何か書いていないんですか?」

淀川「……き、気持ちが弾ける予感。恋愛に対して、色んな意味で積極的になれる日。嬉しいのは分かるけど、冷静さを忘れないで。だとよ」

浦見「……そ、そうですか。積極的になるんですか。なるほど」

淀川「いや、占いだからな? 必ずしもその通りになるとは限らないぞ」

浦見「……そうですか。残念です」

淀川「………………………………ちょっと、席外すぞ」

浦見「え? 今から買いに行くんですか?」

淀川「違う。すぐ戻るから」


――五分後。


淀川「……これ、要るか?」

浦見「え? あ、えっと、今、キーホルダーをもらいました。金属製の、イルカを模したものです」

淀川「前、雑貨屋で見つけてさ。お前に似合うと思って買ったんだけど、何のイベントもないのに渡したらキモいかと思って」

浦見「……貴方がキモい事なんか、今に始まった話じゃありません」

淀川「ひでぇ……」

浦見「だから、変な気の遣い方をしないで下さい」

淀川「……了解」

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