虚構の中の真実

 真実はない。


 四方八方を虚構に包まれたことによってぽっかりと空いた隙間。空洞。中を窺い知ることが出来ないそこを虚構ではないなにか——それを真実と名付けたに過ぎない。

 実質、あるのは虚構ではない空間であり無である。

 しかし人は観測不能なその場所を真実と信じ込んだ。わらにもすがる思いで。それほどまでに追い詰められていたのだ。

 そしてときとしてその真実かもしれない場所は、追い詰められた人間の心を確かに救うものでもあった。

 だから人々はその反虚構はんきょこうとも言えるべき場所へ向かって手を伸ばす。そのために虚構を創り上げる。あらゆる虚構は、あまねく人々を救済するために存在する。

 もしかしたら真実と言うのは、人々が救われた先に向かい入れる思いの中に在るものなのかも知れない。

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虚構の中の真実 詩一 @serch

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