儚きすべては消えるから

 ちょっとレビューというか感想文になってしまうんですが、なんでこんなに良すぎるのかまったく言語化できずびっくりしました。魂で良い……と思わされた感じです。
 でもどうにか抽出してきたのですが、画が恐ろしくいいからだと気付きました。ただ、画が恐ろしくいいのにずっとモノクロなんですよ。一話目は薄暗い重たい灰色がずっと敷き詰められており、そのトーンを二話目も引き摺ります。主人公は妹を失い、探し、戦場に出るのですが、ここにも黒煙が上がる暗い画が続きます。主人公自体も渇いたモノクロな男です。
 死体置き場でヒロインというか女性に出会うのですが、このあたりは少し明るくなるものの、ウサギのお守りを手渡したあとの戦いから、一気に画面が暗くなる……と見せかけるんですよこの小説。なんだこれは。このまま暗くなっていって幕切れかと思いきや、晴れているのに雪が降ります。
 これ、ここなんですよ。画面が一気に明るくなってしかしそれは溢れんばかりの白色です。真っ白な雪、真っ白な巫女、真っ白なウサギ、そこにいつの間にか佇んでいる渇いた主人公。ラストの段はご自身の目で確かめてください、最後まで画が良いです。読後に襲ってくるこの……虚無感……最高ではないでしょうか……? すごいですねこれは……情景の作画が良すぎて私の頭も真っ白になりました。あともうウサギが本当にいいです、ユキウサギの系列だとお聞きしたので森が閉じたら他もすぐ読みたいくらいぐっとウサギに引き寄せられました。
 この山岳信仰、土着信仰、私非常に好きなんですよね。霊山から魂が還るという構造もどこか仏教的ですが、カルマゆえの輪廻というよりはまた生まれてくるという祝福、よろこびの面がつよくて、人間の生への優しさを嗅ぎ取りました。画面もいい、構成も堅実で美しい、信仰は想像上でありつつ現実味のある土着信仰、私から言うことはもう本当にありません。素晴らしいです。