世界観がとても緻密に創られている印象を受けました。
ファンタジーなので当然といえば当然なのですが、この基礎ががしっかりしていないと没入感を得にくい。
国の名前や物の名前といったところから魔術に至るまで理論的に構築されています。
龍がどのように生活しているのかも分かりやすい。
書くべきところは説明し、想像を膨らませる部分は情報量を少なくするというのは小説として大切な部分です。
ファンタジーだとここが難しいのですが、それをさらっと行っているので読んでいて不安を感じることはありませんでした。
きっと面白くなるだろうと思わせてくれる作品でした。
どうやら不穏な事件が頻発しており平和だった世界にも、悪意が満ちている様子。
ミステリ的な謎も投入することでジャンルを横断する魅力もありました。
主人公にも隠された秘密があるようなので徐々に解決していく過程も楽しみです。
本格的なファンタジーを読んでみてはいかがでしょうか。
龍族と人間、様々な種族が混在する世界。
結ばれることが決して許されない二人が出会ってしまった時、待ち受けるその運命とは。
まだ幼かった頃の主人公のアシュリンが、子供の龍、サミュエルを助けるシーンから始まります。
それから月日が経ち、再会することになり、二人は次第にこの大きな運命に飲み込まれて行き、己の切ない過去と共に突き進んでいく、異世界での恋愛ファンタジーです。
構成は3部に分かれており、現在、過去、そして未来へ繋がる完結編となっています。
切ない悲恋から、バトルシーン、ミステリーも散りばめられており、読んでいてハラハラドキドキ。
その分、ラストは想像以上のハッピーエンドで思わずガッツポーズをしたくなる結果が待っています。
本当によかったね、と……。
この壮絶で儚い雰囲気がこの文章内にもとても美しく描かれており、うっとりとしてしまう世界感がそこに広がっています。
切ない恋愛や、悲恋が好きな方、バトルファンタジーが好きな方にもにぜひ読んでほしい壮大な物語です。
人間と龍が住まう世界。人間の国に住むアシュリンは、幼い頃龍の子供を助ける。そのお礼にともらった月白珠(げっぱくじゅ)を肌身肌なさず持っていた彼女は、大人になってからかつての龍の子、サミュエルと再会する。
すっかり青年になったサミュエルと共に龍の住まう国、エウロスへ行ったアシュリンは、そこで自分の運命を知ることに──
美しい筆致で紡がれる世界観と、過去と現在を結ぶ悲恋。様々な要素が物語の魅力を引き立たせ、一口では語れない重厚な物語を紡いでいます。お互いに惹かれ合うアシュリンとサミュエルでしたが、かつて戦争をしてきた人間と龍族の間には根深い遺恨が残っており、彼らの婚姻に反対するものもいます。加えて近頃、純血の龍族が絡むと言われている謎の事件も起き始め、アシュリン達はその事件に巻き込まれてしまいます。
想い合う二人に立ち塞がる人間と龍族の問題。そして、アシュリンが持つ月白珠には、美しくも悲しい恋の物語が隠されていました。
この過去の恋物語もよく作り込まれており、過去の章を読んだ時は、それだけで一本の独立した物語を読みきったような満足感でした。
過去の悲恋が現在に繫がり、そして現在起きている事件の解決などすべてが収束していく最終章も見逃せません。
緊迫したバトルシーンもあり、読み応えは十分です。
ラストは大団円と言って良いほどのハッピーエンド。悲劇を乗り越えた後の幸福の素晴らしさを、ぜひこの作品を通して体感してみてほしいです。
※外伝ではアシュリンとサミュエルのその後、サミュエルの学生時代など本編と違ったテイストの彼らを楽しめますので、本編読了後はそちらも併せてお楽しみください。
邂逅編、過去編、完結編の3つで構成されているこの作品。読後にはいったいいくつの物語を読んだのだろうという満足感です。
かつては大きな戦いがあったけども、今は人間と龍族が共存する世界。主人公アシェリンが生きる時代では平和なはずでしたが、アシェリンと龍族のサミュエルが意図せず出会った時から運命はまるで待ち構えていたかのように動き始め。
彼女が受け取った月白珠という宝珠の秘密を紐解きながら、過去に起こった出来事が心理描写と共に緻密に描かれていきます。
平和の影に残り続ける傷、人間と龍族の問題、身分差などの社会問題を含みつつ、哀しくも美しい恋物語が編み上げられ、まるでこの世界が実在するかのような存在感は必見。