様々な想いが複雑に絡み合い、形成していく美しい物語

人間と龍が住まう世界。人間の国に住むアシュリンは、幼い頃龍の子供を助ける。そのお礼にともらった月白珠(げっぱくじゅ)を肌身肌なさず持っていた彼女は、大人になってからかつての龍の子、サミュエルと再会する。
すっかり青年になったサミュエルと共に龍の住まう国、エウロスへ行ったアシュリンは、そこで自分の運命を知ることに──

美しい筆致で紡がれる世界観と、過去と現在を結ぶ悲恋。様々な要素が物語の魅力を引き立たせ、一口では語れない重厚な物語を紡いでいます。お互いに惹かれ合うアシュリンとサミュエルでしたが、かつて戦争をしてきた人間と龍族の間には根深い遺恨が残っており、彼らの婚姻に反対するものもいます。加えて近頃、純血の龍族が絡むと言われている謎の事件も起き始め、アシュリン達はその事件に巻き込まれてしまいます。

想い合う二人に立ち塞がる人間と龍族の問題。そして、アシュリンが持つ月白珠には、美しくも悲しい恋の物語が隠されていました。
この過去の恋物語もよく作り込まれており、過去の章を読んだ時は、それだけで一本の独立した物語を読みきったような満足感でした。

過去の悲恋が現在に繫がり、そして現在起きている事件の解決などすべてが収束していく最終章も見逃せません。
緊迫したバトルシーンもあり、読み応えは十分です。
ラストは大団円と言って良いほどのハッピーエンド。悲劇を乗り越えた後の幸福の素晴らしさを、ぜひこの作品を通して体感してみてほしいです。


※外伝ではアシュリンとサミュエルのその後、サミュエルの学生時代など本編と違ったテイストの彼らを楽しめますので、本編読了後はそちらも併せてお楽しみください。

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