エピローグ -国王の仕事-

 全ての勇者たちに英雄という称号を授けた王は、ため息をついた。


「これくらいのこと、魔法でどうにかならんかのう」


 その目の前には書類、書類、書類の山。


「んじゃ、燃やせばいいじゃないっすか」


 百人目の勇者が、王の隣に。故郷に戻らず城で働くことを選んだうちの一人だ。


「そんなことしたらおまえたちの称号が消えるぞ? 謝礼金もチャラじゃぞ?」


 それはやめてください、と英雄が追加の書類を積み上げる。


「というかですね、王様。どうして初めからああやってやらないかったんすか。軍隊動かせば一瞬でしたでしょうに」


 ああ、と老人は背もたれに体重を預け、天井を仰いだ。


「勇者の装備というのは、勇者が生まれる度に作られるらしくてな……さすがに、勇者装備がなければ、あそこまで圧倒することは難しかったじゃろう。ただの一介の兵士には荷が重すぎる」


 しかも勇者はこの世に一人しか存在してはいけない、と続ける英雄。


「うむ。実質犠牲ゼロで、あの魔王を倒す。それには、これしかなかったんじゃて。魔王城に入れば、魔力も封じられていたことじゃろうしの」


 大きく笑う国王の姿は、書類に隠れてしまう。今日中にお願いしますよ、と退室した英雄は、何度もため息をつくのだった。

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ああ勇者よ、死んでしまうとは情けない~王様は射程無限の完全治癒士~ ラクリエード @Racli_ade

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