未来を染めに君はゆく

 めっちゃ好きですね……まず主人公のクズさと文章の勢いが本当に好きです。改行があまりなく壁となっているんですが、まったく気にならず読めるところが本当に好きですね、気持ちが良かった……。
 真面目な講評に入ります。設定が非常に面白いです。死んだ人間を仏様になるとはよく言いますが、本当に仏にした上で、仏にした人間は罰として地蔵菩薩の体をなし、人格がそのまま残っている。尚且つその人格とは相当のクズ。この仏からは考えつかない人格が内側にあるという舞台設定が開幕脳にがつんと入ります。続きを読みたくなる、非常に掴みが上手いです。
 お地蔵様になった主人公と残してきた好きな女性が偶然の一致で対面する場面が一番の見所で、女性の「」台詞と地の文であり伝わることのない主人公の声の掛け合いが、コミカルから一転する箇所が私は特に刺さりました。緩急のつけ方が非常に上手いです。
 偶像のキモチという、キモチを片仮名にすることによってのライトさが、この話がある面では死者との対面であることを浮き彫りにしすぎず、爽やかな読み口になるのかと思います。
 切なさの比重と爽やかさの比重がちょうどいいバランスで保たれており、すごく素敵なお話でした。

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