第26話:復讐・カチュア視点

「幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!」


 フェアが大声を出して怒っています。

 心話は声を出さなくても伝わるのですが、まだ慣れないようです。

 私もフェアも随分と神通力が備わりましたが、使いこなせているとは言えません。

 神の加護をいただき、力さえ分け与えていただいていても、使いこなせなければ意味がありません。


「真聖女様、あいつらちょっと図に乗っているから、こらしめてくるわ」


 フェアがプリプリと怒っています。

 私が真聖女でこの世界を護っていると広めてから、色々な国が接触してきます。

 今日の相手は帝国だったはずですが、そんなに身勝手なのでしょうか?

 神の話では、他の神が加護しているという話でした。

 神が加護しているのなら、同時に教えも伝えているはずです。

 教えを守らないようなら、天罰も下すはずですが、どうなっているのでしょう?


「人間が堕落して神の教えを守らなくなっても、直ぐに天罰が落ちる訳じゃないのですよ、真聖女様」


 私の心がフェアに伝わったようですね、なら私の望みも伝わっていますよね。


「分かったわよ、真聖女様を独りここに置いて行ったりしないわよ。

 まったく、もう神の子供まで宿したんだから、少しは大人になって、寂しがるのは止めて欲しいのもだわ」


 うっふふふふ、そんな事を言いながら、私が側にいて欲しいを思う事を喜んでいる事、私の心に伝わっていますよフェア。

 それに、子供を宿したからこそ、いつもそばにいて欲しいと願っているのです。

 この子を私のような孤独にさせたくはないのです。

 この子が大きくなるまでは、信じられる人と一緒に、絶対に安全なここに籠っていたいのです。

 神が絶対に安全だと言ってくれても、一人は嫌なのです。


「真聖女様、だったら私を報復に行かせてください。

 あの国の連中には、散々虐待されました。

 今は元通りになり、いえ、神様に報復するための力さえ与えていただけましたが、復讐の機会は与えていただけませんでした。

 今帝王が真聖女様に人間界に戻れと言った暴言は、私が復讐するための口実にできます、どうか私に復讐の機会を与えてください」


 確かにこの子は帝国貴族に手足をもがれて死にかけていました。

 いえ、この子だけではありません、多くの子が虐待されていました。

 みんなが復讐をしたいと願っている事、ヒシヒシと心に伝わってきます。

 ですが、この子達だけで大丈夫でしょうか。

 神に力を授かったとはいっても、まだ十分使いこなせているとは言えません。


「「「「「ミャアアアア」」」」」


 金猫ちゃんの子供達、八頭の子金猫ちゃんが手伝うと言ってくれています。

 この子達が強いのはよく知っていますが、それでもまだ幼いので心配です。

 

「ミャアアアア」


 金猫ちゃんが大丈夫と言ってくれるのなら、本当に大丈夫なのでしょう。


「いいですよ、復讐に行ってきてください。

 でも、復讐する相手は悪い人だけですよ、いい人を巻き込んではいけませんよ」

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幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ! 克全 @dokatu

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