斎場は出会いの場所

この言葉は、亡くなった祖母の弟から教えてもらった言葉です。

葬式は生きる儀式と言いますが、この儀式を通じて私たちは縁をえることもあります。

この小説「死人に口なし」は身内の言葉を証明する作品でもあります。
主人公の出生は不遇です。その後関わった人間によって多少人間らしくありますが、不遇の積み重ねによってねじり曲がった性格はそう易々と戻るものではありません。
その証拠に、彼は良い趣味を持っています。斎場巡り。
見も知らぬ人の斎場をめぐってその人の人となりを知る。この設定は「なるほど」と膝を打ち、また、主人公のひねくれ曲がった性格をより強固にしてくれます。

しかしながら、主人公は一つの葬式をきっかけに変わっていきます。
斎場で出会った二人の女性。
見えなかった自分のルーツ。
自分と重なる一人の少女。

葬式という、悲しい儀式の中に見える人間模様。
ハッピーエンド保障と記載がありますが、主人公の変化をお楽しみください。

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