分岐点

 波を巻き上げて飛ぶ車体が傾き、灰色の地面に着陸した。ここからは道が続いているようで、アインズは翼を広げるのを止める。

 追跡者は撒いたようだ。向こう岸から聞こえるサイレンの音を背に、俺たちは歓喜の声を上げる。


「九十九さん、お腹空きました。そろそろ休憩しません?」

「奇遇だな。俺も腹減った。ちょっと走ればダイナーがあるだろうし、ハンバーガーにするか?」

「私が選びたいです!」


 昔の俺なら、新たな追跡者の存在に怯えて走り続けていただろう。だが、今は二人だ。道が続いている限り、撒くことだってできる。

 きっと、今までも無数の分岐点があったのだ。何を食べるか、何を相棒として選ぶか、誰を助けるか。どれも必然ではない、俺自身が選んだものだ。

 どの選択にも、心からの後悔はない。それなら、きっと間違えていないのだろう。俺は、まだ大丈夫だ。


 目的のない旅を、これからも続けよう。逃げるために、満足するために。そのために必要な腹ごなしのために、俺はブレーキを踏み、ハンドルを切る。

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ルート254の旅人 @fox_0829

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