最新話
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これからはもう、胸張って「趣味は読書です」って言おうと思う(※但しかなりの偏りがある)
(※このエピソードは次回更新時に「ざっくり雑多な雑感」へ移動します)
近況ノート「ひとりごとつれづれ」でも一寸呟いていた、文庫版「邪魅の雫」を読了した。次は最新刊のノベルス版「鵺の碑」を読みたいとは思う――が。
久しぶりに読んだ京極堂シリーズ、今作は過去作のおさらい的な要素もあり、各作品の詳細をかなり忘れているのが読んでいて悔しかった。
どうにもシリーズ最初から読み直したい欲が湧いてきてしまい、一瞬悩んで結局は文庫版「姑獲鳥の夏」を引っ張り出して読み始めてしまった。
「姑獲鳥の夏」は薄い。
――否、違う、薄くはない。
文庫としては充分過ぎる程分厚い。
そうじゃない。京極堂シリーズにしては薄いだけ。普通の文庫二冊分はある。今回読んだ「邪魅の雫」は四冊分くらい。
製本職人たちのため息が聞こえてきそうである。
ご存知の通り、このシリーズは分厚い。所謂レンガ本である。ノベルス版などは特にレンガそのもの。鞄に忍ばせてぶんと振り回せば一撃、痴漢も撃退できるであろう。最早読む鈍器である。
文庫版でも重いし、只管持ち難い。あれこれ試しながら得た姿勢の最適解は、うつ伏せに寝っ転がって読むスタイルである。仰向けで読む場合は筋トレになるかもしれないので、体を鍛えたい人は一石二鳥である。
何故、そんなおよそ携帯に向いていない分厚い小説を読むのか。
それは。
――面白いから。
その一言に尽きる。
ただ、万人にお勧めはしない。
読書好きでもこのシリーズは恐らく人を選ぶ。
好きだよという方、いらっしゃったらコメントください。
興味があるよ、という方はまずシリーズ第一作「姑獲鳥の夏」冒頭から、主人公と京極堂のやり取りが一段落するまで読んでみて、ほう、と思ったら多分大丈夫。うへえ、と思ったらそっと本を閉じて他の娯楽に時間を割くことをお勧めする。
ほう、と思ったら、もう分厚さは気にならなくなる。そういう小説である。続くシリーズがどんなに分厚くても読める。寧ろ分厚くなくては京極堂シリーズではないと思えるようになる。
文庫の分冊版も出版されているが、このシリーズの真髄はあの分厚さを読んでこそにある気がする。よって、可搬性という観点で迚も優れている電子版で読むことは、矢張り何処か趣が違うのである。
通常の文庫一冊が約十万文字だとすると、「邪魅の雫」で四冊分だから四十万文字。ちまちま読み進めていたから日数は掛かっているが、実はその間に、ふと思い立って自作の非公開未完大長編を読み返したりしていた。そちらも数えたら同じくらいの文字数があった。
自作の読み返しも読書に含めて良いのであれば、十月中に八十万文字は読んでいることになる。
そしてまた、「姑獲鳥の夏」から読み直し始めている。
これを趣味でなければ何だと云うのか。
故に、エピソードタイトルなのである。
初対面スーツ男子「趣味はなんですか?」
小豆沢「読書ですね」
スーツ「へえ、どんな本を読むんですか?」
小豆沢「――京極堂シリーズ、とか、です」
この後に続くスーツの反応によっては「友よ!」とガッツリ握手をするか、「あっ(察し)」とチベスナ顔になるか、今後のお付き合いの分岐点となる重要なポイントである。
仮令知らなくても、興味を持った風で話を広げてくれるなら、そんな世渡り上手なスーツはきっと出世するだろう。
◆
これは、余談も余談だが――。
「姑獲鳥の夏」は過去に映画化もされている。
酷い酷いと評判で、どんなに酷いかと怖いもの見たさで鑑賞したら、それはもう想像を遥かに超える酷さだった。
原作を読んでいるからこそ怒りが湧いてくるし、原作未読だったら何がなんだか解らない怒りが湧いてくるだろうと思った。
過去、観て後悔した映画はこれだけである。
◆
私は益田くん推しである。彼が出てくると安心する。京極堂とか榎木津さんとかの破天荒なキャラも多い中で、彼が一番話が通じそうだからだ。
苦悩を抱えつつも飄々としている性格で、周りからの、特に榎木津さんからの扱いが不憫かわいい。滅気ずに確乎りと幸せになってほしいものである。
シリーズに登場する女性キャラは皆、頭が良く、芯が強い。私は「狂骨の夢」の朱美さんと友達になりたい。それと千鶴子さんと仲良くなって馴れ初めを聞きたい。
敦っちゃんは溌剌過ぎて、陰キャには眩しい。
◆
読書の副次的効果と云えるかどうか判らないが、私は一時期この京極堂シリーズ及び百鬼夜行シリーズを読み漁っていた頃、ぶっつけで挑んだ漢検二級に(ギリギリ)一発合格することができた――と云う、小さな自慢を最後に記しておく。
(20231021)
エッセイにも満たないつれづれ散文 小豆沢さくた @astext_story
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