Epilog:縁は宵闇の中へ溶ける
耳元に吐息を感じて、ハッと目を覚ます。
見慣れた天井には、淡い光を放っている
慌てて隣を見てみると、そこにはちゃんと
ああ、そうだ。明日から
それにしても変な夢。妙に生々しくて、それに、少し疲れている。
穴が開いた感覚がするお腹を撫でてから、体を傾ける。
早く寝てしまおう。そう思いながら、ふと枕元に目をやった。
枕元には、白い花弁が散っていた。
ああ、じゃあ、あれは本当に起きた出来事だったんだ……とすぐに思ったけれど、それがなんなのか手から水が零れ落ちる時みたいにどんどんと記憶の輪郭が消えていく。
薄く輝いていた白い花弁たちも、私の記憶が曖昧になるのと呼応するように、ゆっくりと闇の中へ溶けていった。
さっきまで確かに覚えていた不思議な出来事や、黒い髪の女の子、彼女と一緒にいたとても綺麗な男の人のことがどんどんと曖昧になっていく。
嫌な気持ちはしない。ただ、少しだけ寂しい気持ちになりながら、私は隣で眠る彼に抱きついて、もう一度微睡みに身を任せた。
きっと、縁が結ばれればまた会うこともあるのだろう。だって私たちはどこかの神様から、素敵な祝福を受けたのだから……。
黒髪乙女と迷宮の魔女 小紫-こむらさきー @violetsnake206
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