この場所はなんだか、居心地がいい

孤独で、少し卑屈な青年が主人公。
けれどこの作品には、大海をゆったりと泳ぐ鯨のような、独特のテンポで時間が流れているように感じました。
あるいは、夏の強い日差しを和らげてくれる木陰のようなやさしさが。

52Hz、みんなと違う周波数の鯨は、己を偽らなければ群れの中で生活できないのでしょうか。そんな彼の迷いを、少女の純心がゆっくり、ゆっくり、解きほぐしてくれます。
人は誰しも、根本的には孤独なものだから。居場所を見失いそうになったら、彼らの世界をそっと覗きに来てください。

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