人や精霊、竜や狼などたくさんの種族が住まう世界。過去に大きな戦いがあったその世界で、あまり恵まれた境遇とは言い難い人生を歩んできた主人公ディル。
まずこの主人公がとても美しく、儚い。
話し方の中に、自分を算段に入れてないような言葉が紛れていたり、戸惑っている表現もまたディルの儚さと美しさを良く表していると思います。
幸せや人の温もりに対してよくわからないと思っているディルの危うさには少しハラハラしますが、ある出会いからそれが変わっていく。
数々の運命に巻き込まれながらも、徐々に自分はどうしたいのかと前を向いて歩き出す姿が本当に綺麗。
そしてディルに触れていくことで変わっていく、共に旅をする仲間の感情が丁寧に描かれています。
『ここではないどこかへ、』
運命を、その宿命を諦めたように受け入れていくかに見えた人々が、愛する心と共にどういう結末を選び、未来を掴み取るのか。
この美しい物語を是非見届けてほしい。
「未分化」の主人公・ディルが孤独と迫害を耐えながら育ち、いつも寂しさを抱えつつもある出来事をきっかけに自らの運命に向き合い愛を掴み取っていく。
実はディルの出生が深く関わっていて、出会い、惹かれ、絡む出来事はやがて世界を揺るがすほどのものになる――――。
遅ればせながらextraエピソードまですべて読み終えることができました。
残酷な運命に翻弄されながらもひたすらにけなげなディルがとても可愛く、また純真無垢で美しく素敵でした。無意識小悪魔に男たちの心をかき乱すので毎回「甘ーい!」と悶えながら読み進めること必至でした。
個人的にはディルの《逆》分化ver.もどんなふうになるかなあと考えたりなどしました。そして作中では結果として真の想いを通じ合えなかった「彼」も最後の最後では何はともあれ幸せそうで良かったとじ~んときました。
素敵な作品をありがとうございました。
過去の大戦による因縁の残る、仄暗い雰囲気の世界。
入念に考え込まれた設定の土台の上で、主人公であるディルを取り巻く緻密な人間関係とその運命を巡る旅が描き出されています。
ディルは触れればすぐに壊れてしまいそうな繊細さで、その儚さと無防備さに惹きつけられます。また、ディルが気になる男性陣との三角関係の描き方が非常に巧みで、「ディル、気がついて!」とやきもきしたり「ロイ…」と切なくなったり。
設定や人物描写が細かいところまで書かれているのでまた少し日を置いてから読むと違った印象になりそうだなと思いました。
個人的に、ディルがよく「少し、眠ってもいい?」とか二分節でだけ言葉少なめに話す感じがすごく好きでいいなあと思ってます。
メインキャラクターの容姿が美しく魅力的、というのはよくある話だ。誰しもお気に入りのキャラは見た目も中身も素敵な人であってほしいもの、王道になってしかるべきと思う。
けれどこの主人公ディルの登場シーンは一味違う。その類稀な容姿を書き表すのに合わせてちらりちらりと描写されるその仕草、表情、台詞──
「詩人……というほどでは」
この溜め! この「……」がね!!!(読んだ方にしかわからないネタ)
映画館で、スクリーンの向こうからとびきりの俳優が微笑みかけてくれるのに呆然としてしまうような、読者も一緒に魅了される感じがあった。こんな体験は初めてだ。
だからまずは皆様、そのシーンまでご覧いただきたい。最初から数えて二話目だ。そこまで読んでしまえば、あとはもう水のようにすうっと染み込む上品で読みやすい文章引き込まれ、結末までツルッと飲み込んでしまうだろう。
迫りくる悲痛な運命の中で紡がれる、美しく切実な恋愛模様。主人公を愛する男達は、惚れた相手を抱き寄せることに躊躇いがない。切ない抱擁から衝動的な口づけ、ちょっと色っぽいシーンまで、読者の心ゆくまで味わわせてくれる。大満足である。
切なく美しくイチャイチャはたっぷりな恋愛が好物な大人の皆様には是非ご一読いただきたい作品だ。
まず特筆すべきは世界。情景がありありと浮かんできます。
そこに歴史に根付いた人の在り方が付与されてて重厚な世界になってます。
ゴブリンとかスライムなど出てきませんが、しっかりしたファンタジーです。
いや、これこそファンタジー! トールキンの中つ国に引けをとらないです。
時代的には戦争の傷が癒えきっていない頃で、生活している人にとっては厳しいのかもしれません。
そんな中で生きてきた主人公のディルもまた儚い。しかし、まわりにいる人の支えで成長していくというね。
出てくる人全員感情豊かなのも好き。言い方が悪いですが、どいつもこいつもかっこいい!
彼らの悩みも世界の在り方につながっているのも読み手を没入させてくれる要因になっていると思います。
ファンタジー世界にどっぷりはまりたい人はぜひどうぞ。どうぞ!