正義はない、されど悪の敵はいた――

時代劇である。
それもとびきり荒涼としていて、凄惨で虚無感が漂う類の。
舞台はどうやら遠い未来、人類は強大な科学文明を築いた後、大きな戦争によって文明レベルが後退したらしいことがわかる世界観だ。本作にて活躍するのは人間が乗り込むパワードスーツの一種「奇鋼礼装(メタルドレス)」である。
かつては宇宙戦争で活躍したらしい兵器なので、ガ〇ダムばりにビームを撃つわ空を飛ぶわで派手だが――パワードスーツである。中の人がダイレクトに潰れたり焼き殺されたり、華やかなメカバトルと裏腹に凄惨で暴力的な死があふれている。
本作の世界に正義はない。それどころか統一的な秩序すらない。力あるものが根こそぎすべてを奪う荒れ野があるだけである。
世はまさに戦国、というわけだが。
悪党の敵、アンチヴィランたる処刑人はいたのだ――救いはないが、因果応報の報いはある。そんなキレ味抜群のSF時代劇である。