独特で異彩の青春。

七階に図書室があるという高校。
そのために神奈川県に位置しながらも、図書室からは富士山を見ることもできるという風変わりな舞台です。
この舞台の設定がなんとも良い雰囲気を出しています。
小説だから景色が明確に目に見えるわけではないんですけども、それでも独特な舞台の気配が伝わってくるんですよ。

風変わりなのは舞台だけではありません。
そして主人公が付き合うことになる少女も風変わりなら、二人が付き合う理由も風変わり。
付き合うと言っても、その恋人関係もやっぱり風変わり。

なにもかもが私たちの想像する「普通」とは異なっていて、普通でないことがいくつも重なっているところに、この作品独自の魅力が育まれているんですね。
それは「ヘン」という言葉で片づけてしまってはもったいない輝きを放っています。
そして物語という長い文章によって彼らの異彩の青春の細部が彫られていくのです。