このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（225文字）

小生は本作者様の「詩」をよく読ませて頂いてます。
常に個人が見る視点、感性、感覚と少しの「思考」をエッセンスとして加えていてそのバランスを保とうとする考察を感じます。

恋愛観、道徳心、正義感、世間体、哲学、倫理、などなど
それらの捉え方は正に「芸術家」のような感性による表現であり、それ故に表現方法を試行錯誤する数学者のようでもある。

『焦点を持たない詩篇』
まだ読んでいない方がいらっしゃれば、読めばその意味が最大限に解るはず。
是非、起点にして貰いたい。

　自分ではない誰かになりたい主役。
　彼は他人の記憶を知る(見る)技術の臨床試験に参加することになる。

　その試験にはペアとなる女性がいて、彼は彼女と少しずつ関わるうちに、自らが抱えていた辛い過去と向き合うこととなる。

　他人の記憶を見て、自分ではない誰かになりたかった彼の過去とは？

　そしてペアとなった女性との関係は？

　彼と彼女の胸の内。どう変わって行ったのか、是非是非見届けて下さい。

　彼の友人の女性にも注目です。　　　　　　
　来海さんと言う名前の小動物っぽい可愛らしい女性です。

　さて、彼女の名前の読み方は……？
　
　私は何度も『くるみ』さんと読んでは、『違う！』と自ら突っ込んでいました(*^-^*)

文章力が豊かで内容が入っていきやすい

SFの範疇ではあるものの、主となるのはトラウマを抱え、極端に受動的になってしまった一人の青年の自己変革の物語。
なので、SFが苦手な方にもオススメです。

誰しもが持っている「他の人のように変わりたい」という願望を叶えてくれるかも知れないMECという技術と、自分を変えることすら自己努力ではなく機械に委ねてしまうほどの主人公。最初は与えられた記憶を頼りに自信をつけていきますが、やがて……。
他人になりたいと願った青年が至る結末にはかなりグッときますが、それは全編を通して細かく描かれた人間臭さがあるからこそ、成されるものだと思いました。

記憶に関する新技術が一つの大きな要素となっている物語です。

自らを嫌い、「別の人間になりたい」という願望を持つ主人公は、その新技術の臨床試験を志願します。

はたして彼は、その望みを叶えることができるのかーーーー？

その部分についての着地点が、個人的にとても素晴らしかった。


また、この話には恋愛的な要素もあるにはあるのですが、かなりビターです。最初から主人公が好意を持たれている話とは、まったく違う体験ができるのもオススメのポイントです！