第3話 キーワードはWi-Fi ?

 情報屋が情報を提供するとき、渡す順序を間違えない。順序を間違えただけで、事件の場合に限り、捜査指揮権の一部を奪う権利があるからだ。それが力技であったとしても、勝者には、それだけの資格を自分で認めることができる。世の中、弱肉強食だ。

「それで、あのゾンビは、どうなったんですか?」

「動くんだよ、一応。病院では、何度も死んだのを確認したのだが、棺桶から出るとね、ノックが聴こえるんだ。」

「なるほど、事情は分かりました。」

「なに、もうわかったのか。」

「うちの方に、そのゾンビ渡していただけませんか?」

「それは、だめだ。」

「警察の面目というところでしょうか?」

「何か、知っているのか?」

「では、そちらに伺います。」


そうして、第一病院の霊安室に、NeWSのメンバーと、科研が集まった。万一の場合を考え、科捜研は、今回ははずれてもらったらしい。

「同じシブヤでも生きてる場所と死んじゃう場所があるらしいな。」

 担当の刑事は言った。

「まあ、ゾンビといっても、死人帰りが常識らしいですけどね。」

「そんなことはいい。警察に情報をリークする段になってから、拉致られたのは確かなんだ。半殺しの目に遭って、さらにゾンビにされるとは。可哀そうに。」

「いや、これ、完全に死んでますから。卑屈な笑いや、ノック音なんて、よくあるラップ音ですよ。気にかかるときになるものです。で、ばらすんですか?」

「どうしようか?こいつの行動から察するに、遠隔操作が一番有力だ。スイッチを入れたり切ったりという、相当シンプルなものだ。迷惑だから死んでいてもらおうか。」

「焼いちゃうんですか?」

「最終的にな。幹部クラスに恨まれると、こっちも仕事が面倒でね。こんなものはもう出てこない、一回きりにしようって話だ。」

 刑事は、意外と面倒くさがりだった。

「いいんですか? 大手柄とか、かもしれませんよ。」

「ヤクザが怖いんだよ。暴力団とか。」

「じゃあ、死体買います。」

「こいつの、面をつぶすことになるけどいいのかい?」

「ええ、髪の毛一本で誰かわかる時代です。その必要がないことも。」

「じゃあ、やっぱ、科研に任すわ。」

「まあ、チップの線で洗うけど、Wi-Fiじゃね? 場所によって、そんなにはっきり差が出るんだからさぁ。」

「なるほど。量産してくる可能性もあるが。」

「死体がそんなに山と出ますか?」

「近々、抗争の噂なんかないですかね。」

「貧民街でも洗ってるやつを探すか。」

「で、われわれNeWSの出番は?」

「ばらして、何か変わってたら任せるわ。」

 そうして、関係者は解散した。

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