西のカルデラ戦記① －風の舞う地ー

　猛毒の大気「瘴」に侵され、ゆっくりと沈み行く世界。それでも争うことを止めない人々。残された土地と富、その全てを飲み込もうとする中央王権と、従属しながらも地の民としての誇りを持つ辺境地域との間で繰り広げられる策略と謀略の数々は読みごたえたっぷりです。まさに「その時、歴史は動いた」という感じ。
　ある人は、私利私欲のため、ある人は気まぐれに、そして愛する人のため、友人のため、国のため、登場人物たちは自分の思いに正直に行動します。骨太な異世界ファンタジーを読みたい人にはオススメの一作。

　硬質な文章が紡ぎ出す「戦記」
　冒頭の世界観と登場人物の立ち位置さえ頭に入れれば、その先に待ち受ける戦いの歴史に引き込まれます。
　冒頭で諦めてはいけません。かくいう私も名前を覚えるのに四苦八苦致しましたが、アロイジウスという若い竜騎の成長を中心に、いつの間にかこの「風の舞う地」の物語に引き込まれていました。
　ぜひ読んでみて下さい。この世界の魅力に憑りつかれますから（笑）

　この世界が実際に存在し、そしてその世界に、このような歴史が今まさに紡がれている・・・というのを、俯瞰して眺めるような物語です。
　特定の誰かが主人公という訳ではなく、この世界のこの時代に生きている人全てが主人公という感じもあり、かなりの重厚感ある骨太なファンタジー小説。

　勢力や人物相関、人名の他、この世界独特の単位等があり、かなりの突き詰められ、考え抜かれた世界観をベースにしていて、実際そのような物が存在するのではと思わせる現実感もあります。

　時代が動いていくその瞬間を、まさに今、自分の目で見ているのかと思える内容で、もっと読まれてもいいのでは？と思う作品です。