第4話 槍術士
翌日からは、畑仕事を手伝った。
畑に生えた雑草をとりながら、畑に畝を作る。畑に植えるのは、小麦のようなものらしい。
そういえば、水汲みの仕事をやった時に気づいたのだが、どうやら、若返っているらしい。村に着いたときは気が動転していて分からなかったのだが、転生前には、170cmあった身長も150cm程になっており、大きく見えた女性もそこまで大きくなかったようだ。
10日程、畑仕事を手伝っていると、村人に顔を覚えられ、すれ違った際に挨拶をする程度には、この村に慣れた。いつものように、畑仕事を終えると村長に呼ばれた。
「村長。なんのようですか」
「そろそろリュウセイもこの村にも慣れてきたと思っての。新しいことを始めてもらおうと思ったところじゃ」
「新しいこと?」
首をかしげながら、村長にそういった。
「そうじゃ。お前さん将来は村から出たいんじゃろ」
「まぁ、そうですね」
すぐにそう返事をした。なぜなら、畑仕事をしながら、今後のことについて考えていたのだ。このままここで暮らしても悪くないとは思いながらも、畑から川や草原を眺めていると、やはり、その先の新しい世界を見てみたい気持ちが強くなったのだ。
「それであれば、武術をたしなまなければ旅にはでれん。わが村には、弓を扱う狩人と槍術士しかおらんから、どっちの修行をしたいか選んでほしいのじゃ」
「飛び道具もいいが、槍術の方がよさそうかな」
「そうか。若い者の間では人気がないのだがな。まぁ、槍術士のところへ連れて行ってやるとするかの」
そういって村の外れまでくると、一人の壮年の男がいた。2m近い身長があり、その男の腕は、まるで木の幹のように太く、太陽光に照らされた赤髪がいやでも目立っていた。その男の顔は戦士の趣があり、深く皺の入った凄みのある顔をしていた。
「シュペーア、こいつが今日から弟子となるリュウセイじゃ」
「よそからきたっていうリュウセイか」
男は、リュウセイを一瞥すると、槍を立てかけた。
「はい。よろしくおねがいします。シュペーアさん」
「師匠でええ。さん付けは気持ちわりぃからな」
「はい。師匠」
「村長もありがとうございます」
「それじゃ、わしは戻るとするかの」
「練習は畑仕事の前と後に行う。今日は初日だから、練習用の槍と突きの練習を行う。いっぱしの槍術士になるには、時間がかかるかもしれないがよろしくな」
師匠が小屋の中から取ってきた、2mほどの長さの木槍を手渡された。槍を持ってみると木製のわりに重い槍だった。
「足を広げて、かまえてみろ」
槍を構えてみた。
「まぁ、最初はこんなものか。もう少し槍を上にあげろ。そうだ。その状態で30分は保てるように構えの練習をしろ。そのあとは、槍を持って走れ」
「槍を持つのと走るだけですか。」
「そうだ。それが基本だ。俺が良いというまで、それしかやるな。変な癖がつくと訓練の意味がないからな。」
そういわれて地味な基礎練がスタートした。
早朝の基礎練は、気持ちよく、最初は楽しかったのだが、数週間経ってくるとまだ、次の訓練にはやく移れないものかとやきもきしてしまった。周りの人にそれとなく、師匠のことを聞いてい見ると、弟子が僕以外にいない原因もこの練習方法だとのことだった。貧乏くじを引いてしまったかと少しへこんだものの、選んだからにはやり通そうという気持ちと、旅に出るためにも、ひたすら槍を構え、走った。
ようやく師匠に良いといわれたのは、始めてから数か月過ぎた頃であった。
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