僕の嫌いな異世界モノ 二.
ということで、僕の嫌いな異世界小説の続きを書いていこうと思う。
前置きは散々したので、ここでは省いていく。
【シリアスでもないし、ギャグでもない作品】
これは多くの人に共感していただけるのではないかと思う。
正直言って、こうなっていない異世界モノの方が稀である。書籍化されるような作品も含めて、世にはこういう異世界モノが溢れかえっている。
作品を書き始めるときに、いきなり書き始めても良いものが書ける人間はほとんどいない(嘘のようだが一応存在はしている)ので、どれだけ素晴らしい物語を書く人も、事前に何段階かに分けて準備を行なっているはずだ。というか、していない人はした方がいい。「頭の中にあるから」とか言わずに絶対にした方がいい。
準備ができていれば、その時点でキャラクターや世界観はほぼ完璧に出来上がっているはずだ。ならば、自ずとその作品が「シリアス」なのか「ギャグ」なのか。という、なんとなくの方向性も確立できているはずなのである。
しかし、異世界モノにおいてそういった作品は、先述の通り稀だ。
それは前のエピソードで述べた通り、異世界モノはキャラクターの掘り下げが行われていないために、作品全体の世界観すらも危ういからだと僕は考える。
主人公がなんらかの闇を抱えているのなら、その作品は全体的にシリアスな雰囲気になるはずだし、主人公がひょうきんなやつなら、その作品は全体的にギャグ寄りな雰囲気になるはずだ。
僕は「シリアスな作品にギャグはいらない」とか、その逆とかを言っているのではなく「とにかく方向性はどっちかに決めろ。そして混同するな」と言っているのだ。
混同するというのはどういうことかというと、例えばシリアス寄りの雰囲気を出していた主人公が、敵前でいきなり小ボケをかます。
あるいはギャグ寄りの主人公がいきなり正義がどうとか言い出して、悪を滅さんとして行動し始める。
といったことである。
冗談みたいだが、こういう作品は少なくない。
大方『ワンピース』や『銀魂』のキャラクターたちが敵前で小ボケをかます傾向があることに感化されでもしたんだろうが、あの作品だって、本当に大事な戦いでルフィや銀さんはボケない。シリアスとギャグの住み分けがされているのだ。
そう、何気なく書いてしまったが、最も大事なのはギャグとシリアスの住み分けである。
これが分かっていない作品が本当に多い。
正直言って、TPOを弁えないギャグというのはほぼ100%ウケない。なぜなら、それは食事中に下ネタを言うのと同義だからだ。
シリアス中にギャグを言うのと、食事中に下ネタを言うのは同義。
これだけは確実に覚えて欲しい。
ではこれを回避する方法は。
これは非常に簡単で、今自分がシリアスを書いているのか、ギャグを書いているのか意識しながら書くだけでいい。
それだけで悲惨なことにはそうそうならないだろう。
西尾維新のようにシリアスの中にギャグを、ギャグの中にシリアスを入れることを真骨頂とする意味のわからない作家がいるが、あの人は天才だし、ギャグも面白いので、誰も咎めることはしないだろう。どうしてもギャグとシリアスの混同をしたいなら、まずは彼ほどの才能を身に付けることから始めてくれ。
しかし、どちらか一辺倒になってしまうと、それはそれで作品全体の起伏がなさすぎて面白く無くなってしまう。加えて、人生がずっとシリアスな人間や、ずっとギャグな人間はいないので、リアリティの観点から見ても、それは避けた方がいい。
あくまでスパイスとして細かく砕いたものをまぶして行く分にはなんら問題はない。むしろ、それができることが良い作品になる条件なのではないだろうか。
もちろん、どちらか一辺倒の作品が創作の基本であり、尚且つ書き易くもあるので難しいという方はまずはスパイスなど気にせず書いてみることをオススメする。
『冷たい熱帯魚』や『悪の教典』のように、作中通してずっとシリアスだが、それでも面白い作品はあるし『ギャグ漫画日和』のように、ギャグのみでも面白い作品はある。
繰り返しになるが、大事なのはバランスと住み分けだ。
【タイトルが無駄に長い作品】
異世界モノに限らずなろう系にはこういったタイトルが多いが、これにある程度のロジックがあることは僕も理解している。
しかし、それを理解した上で僕は金を積まれても、こんなタイトルを自分の作品につけようとは思わない。第一に長ったらしくてみっともないし。
作品のタイトルは、いくつかのパターンに分けられる。
まず一つ目は、メインの人物の名前、もしくは言い換えのパターン。
これは主人公、もしくはメインキャラの名前や象徴を引っ張ってくるパターンだ。
主にタイトルに据えられた人物を中心に話が展開する作品につけられる傾向にある。
例えば『まどかマギカ』や『涼宮ハルヒの憂鬱』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』なんかがこのパターンだ。
二つ目は作品のメインに据えられた物や現象のパターン。
これはとある物事や団体などを中心に話が展開する作品に付けられる傾向にある。
例えば『FAIRYTAIL』や『炎炎ノ消防隊』『消滅都市』『ソードアート・オンライン』なんかがこのパターンだ。
三つ目は作品を象徴する熟語(造語)のパターン。
タイトル回収と言われるのは大抵このパターンで、作品を見る前には意味がよく分からないが、見終わると分かるなんて芸を仕込めるので、使い勝手がいい。
作品の中に伝えたいことが明確にある場合も、このパターンを使うことで感動を増幅できる。
『Angel Beets』や『鬼滅の刃』『物語シリーズ』なんかがこのパターンだ。
そして四つ目は問題の、作品を簡単に説明した文や、作品を象徴する台詞のパターン。
タイトルを付けるのが簡単であり、どんな内容が想像がつきやすいので、ターゲット層の目を引きやすい特徴がある。。
例えば『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』や『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』『転生したらスライムだった件』が当てはまる。
正直言って、四つ目は怠惰だ。
タイトルを考える手間を放棄している。実につまらない。
作品のタイトルは顔だ。作品自体だけでなく、主人公や作者自身の顔だ。
これはこういう雰囲気の作品です。と伝えたいのはよくわかる。
また、インターネット小説において、作品名を作品の概要に位置付けることで、読者を引き寄せているのもよくわかる。しかし、それは考えられた末にそのタイトルになっているならの話だ。
インターネット小説でこう言った作品のタイトルをはじめにつけた人。というのは間違いなく天才だ。作家としての才能意外にも、どうすれば自分の作品が伸びるのかを分析する先見の明がある。
悪いのは二番煎じ諸君だ。
おそらく、はじめにこれをやった人のタイトルは、文学作品として分析しても優秀だと判断できるモノだったはずだ。しかし、最近のものは違う。
形だけを真似ているために中身がない。意味がない。
そんなものに存在する価値はないので『無題』だとか『名称未確定』だとか付けている方がまだ賢明だと言える。
作品のタイトルはその作品の最小単位の要約である。故にその作品を読解する際、資料として作者を分析する際は、タイトルをよく見ろ。と僕の恩師は言っていた。
作品のタイトルを分析していけば、作品の構造が、そして作者の性格が分かってくる。作者はなぜこの作品をこういう風に要約したのか。つまりは、作者が真に伝えたいことは何なのか分かってくる。
多くの場合、作者は自身の作品について、作中の言葉以外で多くを語ることをしない。理由は様々だろうが、僕はそれがかっこ悪いからなのではないかと思う。
小説は突き詰めていけば「俺はこんなおもろいストーリーを思いついたぜ。かっこいいだろ」だ。実際僕の執筆意欲の六割は自己顕示欲でできている。
そんなおもろいストーリーをせっかく一番かっこいいい姿で終わらせたのに、後から「ここはこういう風になっていて、実はここの伏線なんです」とか後付けの説明を加えて行くと、非常にかっこが悪い。
しかし、タイトルは違う。
作者が自分が何を思い何を描いたのか、それを作者自身のプライドが傷つかない範囲で解説してくれているのがタイトルだ。
つまり「お前らに細かく教えてやるつもりはないが、この作品でメインに据えているのはこれだ」という風に作者自らが自身の作品に解説を入れてくれているのである。言ってしまえばツンデレだ。
「べ、別にあんたたちにこの作品について理解して欲しいわけじゃないけど、ヒントだけはあげるわ! 感謝しなさいよね!」
ということである。
じゃあ長ったらしいタイトルというのは何かというと、最初から好感度マックスで始まるギャルゲーだと思ってくれ。
作者最後の防衛線であるはずのタイトルでさえ、最初からマックスで読者に媚びてしまったら、完成度がどうこう以前の問題で、かっこ悪い。
じゃあ、回避するためにどうすればいいか。
回避方法としては二つ。
一つは長いタイトルの中に、伝えたいことや仕掛けを仕込むこと。
これは簡単ではない。そもそも秀逸なタイトルが付けられなくて、半ば逃げのようにこういったタイトルをつけていた人々が、これを読んだだけでなんらかのインスピレーションを得て、そんな細工を効かせたタイトルを考えるのは、ほぼ不可能だからだ。
二つは、別の方法でタイトルを付け直すこと。
これはそこまで難しくはない。
主人公に二つ名があるならそれをそのまま付ければいいし、何かメインとなる団体や現象があるなら、それ自体の名前や、それの言い換えを付ければいい。
できることなら、言い換えをする段階で伏線を仕込めるといいのだが、難しいのでできなくてもいい。
じゃあ、読者層にはどうやって作品の概要を伝えればいいのか?
それは概要欄で伝えればいいだろう。あるいは、カクヨムにはキャッチコピーという非常に便利な機能があるので、そこで伝えればいい。
何も、一番太字で表示されるからと言って、タイトルを殺す必要はない。
とにかく、タイトルは簡単につけない。執筆開始段階で思いつかないなら、完成してからでもいいので必ず多少は凝ったものをつけること。
安易に考えたタイトルは作品全体の品格に関わってくる。
次回に関しては、何を書こうかあまり考えていない。
まあ気長に待って頂こうと思う。
それでは次回更新までさようなら。
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