魔法ってなんだよ
魔法ってなんだよ。
異世界モノに出てくる魔法は説明が不十分なくせして、決まって主人公は「天賦の才」とやらでホイホイ身に着ける。
そういうのを見るたび、僕は魔法ってなんだよと思う。
広辞苑で引いてみると
「魔力を働かせて不思議なことを行う術」とあった。
正直ピンとこない。
まあ広辞苑というのはたくさんの言葉を簡単にわかりやすく説明する本なので、魔法について調べるのなら、Wikipediaの方がよっぽど詳しく載っているのは当たり前だが。
閑話休題。
異世界モノには魔法がつきものだ。
もう嫌ってくらい魔法が出てくる。もう嫌。
前回も軽く話題にした『ドラゴンクエスト』でも、呪文というのが出てくる。
炎を出したり、氷を出したり、風を起こしたり、息の根を止めたり。
どうやら魔法というのは、この世界における科学なんかと比べ物にならないくらいに便利らしい。
しかもその源である魔力というのは、普通に生活しているうちに回復するようではないか。
魔法すげえな。
作品によって魔法の普及率はまちまちで「貴族しか使えない」だとか「普及率99%で、使えない奴が馬鹿にされる」だとか「魔法を使えるやつは一瞬で王様、最強、万歳」だとかいろいろある。
また、魔法の効力もまちまちで「魔法には段階があって、最低のものだと炊事程度にしか使えないが、最大のものだと国が滅ぶ」だとか「物好きしか使わん、微妙」だとか「みんな使ってる、魔法最強」だとか。
しかし、僕が魔法を作品に登場させるにおいて、最も大事だと思うのはこんな付随的な情報では無く、もっと根源的なもの。
魔法というのは一体どのような人間が発見し、どのように研究され、どのような仕組みで発生するのか。である。
魔法の普及率や効力というのは上記の三点を考えるだけで、改めて考えずとも勝手に決まる。
仕組みが難しく専門的な知識が必要なら普及しないだろうし、簡単なら普及するだろう。
理論自体が難しくても、この世界の科学のように理論がわからない人でも使えるように応用した道具は普及するかもしれない。
発見したのが独裁的な貴族だったら、平民への普及は阻止するだろう。反乱の火種になるからだ。
発見したのがそういった貴族でなくても、権力者が大きな力を持つ国で発見されたのなら、それは軍事利用され、一般には普及しないかもしれない。
この世界の科学に歴史があるように、異世界の魔法にも歴史があるはず。
科学がそうでないように、ポンと魔法が生まれて「なんだこれ!? すげえ!!」なんていう風に普及するはずがないからだ。そこには間違いなく魔法学者たちの努力がある。
しかし、現実世界を舞台にした小説でスマホを使うシーンを書いたとき、
「これはスマートフォン、略してスマホと言うんだ。スマホはとても便利な道具で、遠距離での会話や情報伝達、人との意見交換、はたまた娯楽としても使える優れた機械で、最初に発明した人物は……」
という説明をいちいち行わなくてもいいのと同様に、魔法が出てきたからといっていちいち事細かく歴史から説明していく必要はない。
むしろ、ここで僕が書いたことを鵜呑みにして「よっしゃ! じゃあ世界観の説明をするときにまとめて魔法の歴史もめっちゃ細かく説明すれば、説得力上がるじゃん!」という風に脈絡もなくじゃんじゃん細かい設定を書いていくと、逆に不自然だ。
ならば「俺様の書いた作品に登場する魔法は、ちゃんといっぱい考えてますよ」と読者に伝えるためにはどうすれば良いのだろうか。
ここまで一度も書いてこなかったが、僕もエブリスタというサイトで一度だけ閲覧数の誘惑に負けて異世界モノを書いたことがある。
まあそんなに面白くならなかったし、何より恥ずかしかったので長編一個でいい感じに完結させ、しばらくした後に消したが。
その作品は異世界転生こそしないものの、魔法が頻出する世界観だったので、僕はアホみたいに細かく魔法の設定を書いた。それはそれは細かく書いた。
しかし困ったのだ。
どうやってこのめっちゃ考えた魔法の仕組みを披露しようか、と。
考えた末に僕が出した結論は作品のかなり冒頭に、魔法学の授業を行うシーンを挿入することだった。
その作品では、みんな大好きな俺TUEEEEをするために少々主人公を強めに設定していた。それをいいことに、主人公が魔法学にも通じているという設定を後付けし、魔法学校に務める友人から特別講師として招かれる。というエピソードを途中にねじ込んだのだ。
すると、話の流れとしてかなり自然に魔法の仕組みについて説明することができる。
我ながらよく考えたものだ。まあ作品自体はクソほどつまらなかったが。
魔法の説明が絶対に必要だとは言わない。前回例に出したリゼロが、そこまで詳しく魔法について言及されているわけではないのに、特に違和感がないことからも、それは明らかだろう。
では、どういう場合に魔法の説明が必要なのか。
これには明確な指標がある。
主人公の魔法の習得エピソードの濃さ、および作中における魔法とそれ以外の戦法の比重である。
主人公やその仲間の魔法習得エピソードが濃い、もしくは敵味方問わず大抵の登場人物はみんな魔法を使っている。
これに該当する作品においては、できるだけ最初の方に魔法について読者が納得できるよう、説明した方がいいと僕は考える。
事前にしっかり説明をしておかないと、読者は魔法が出てくるたびに「これってどういう仕組みなんだろう」と感じてしまう。
疑問に思うのは読書のカロリーを増大させるので、とにかく読者にストレス無く読んでもらわなければいけない異世界モノでは、該当する要素は省いていったほうがいい。
前者は習得エピソード中に魔法理論的なモノを、魔法を教えてくれる人物から聞けばいいが、後者は多少の工夫が必要だ。
工夫はできるだけ自然な流れで行えるのがいい。
しかし、魔法を大きく取り扱う作品においてはかなり重要なシーンなので、多少不自然でもねじ込むことを推奨する。
加えて、このシーンは作品のオリジナリティをプレゼンする場でもある。
異世界モノというジャンルは、先駆者に旨味をほとんど吸い尽くされているので、オリジナリティを出すのが非常に困難だ。
是非ここで、自分の作品にしかない魅力を押し出して欲しい。
さて、ここからは僕が先ほど出した拙作の中で、実際に考案した魔法の仕組みについて、プロットのような形式で書いていく。
オリジナリティが大事な業界において、もう読むことのできない作品の設定を公開することが、パクリの危険性を大いに孕んでいることは承知だ。
あえて言わせてもらうが、僕はパクリを推奨しているわけではない。しかし、こんなところでつまづいて、才能を発揮できない人たちの助けになりたくて、これを公開する。
あくまで参考資料として頭に入れて欲しい。
【魔法とは】
・魔法は空気中を浮遊している魔力因子(日本では妖素と呼ぶ)を、魔法陣を書くことで通り道を作り、力を取り出した結果得られる術のこと。
・魔法陣を書いて力を取り出すことを、その方法に応じて『呪い』や『祈り』、『儀式』や『祈祷』と異なった呼び方をする。しかし、その結果得られる効果は全て魔法と呼ばれる。
・魔法を行使した後、魔法の規模や、魔法陣が書かれた材質によっては魔法陣が焼き切れてしまうため、工夫しないと連続使用はできない。
【魔法陣の種類】
・魔法陣には三段階のレベルが存在し、それぞれ『魔法円』『魔法陣』『魔術回路』と呼ばれる。
・魔法円は魔法陣における最小の単位、単体で成り立っている魔法陣を指す言葉。一つにつき一つの魔法を込めることができ、込めた魔法は術者の任意のタイミングで発動する。刺青等でも再現可能。
・魔法陣は魔法円を重ねたもの。字は魔法を行使する際に書かれる「魔法陣」と一緒だが、こちらの魔法陣は魔法円を数える単位としての意味を持つため、それとは別物。
・魔法陣では基本的に五属性(日本では木火土金水)を込めた魔法円を複数個重ね、それらの威力を紋章や祝詞で増幅させたものである。書かれた材質がなんであれ、出力が高いため焼き切れる。刺青にするのは不適。
・魔法円、魔法陣は金属性の魔法によって、空気中に書くことが可能。この場合、魔法を予め用意する必要がないが、一瞬で消えてしまうため、魔法陣を暗記し、素早く書き、尚且つ消えないうちに魔法を発動できるだけの魔力因子を流し込める出力が必要。つまり、才能に左右される。
・魔法使いと呼ばれる人々には体のあちこちに刺青があり、これは自分がよく使う魔法をインスタントに使えるようにするためである。
・刺青にするほどでもない魔法や、刺青にできない魔法陣に関しては、羊皮紙などに予め書いておいたものを利用する場合が多い。
【魔術回路とは】
・魔術回路はより複雑化された魔法陣を指す言葉だったが、現在は違う。
・現在の魔術回路は、かなり小型の固形の物体を指す。
・魔術回路は魔鉱で作られた金属製の物質で、その中にはかなり複雑な魔法陣が入っている。金属製であるために、連続使用に強いが、自由に魔法陣の形を組み換えることができないので、一つの魔術回路につき、一つの魔法しか使えない。
・魔術回路は高出力の魔法を簡単に連発できるため、兵器として運用が主。また、魔導機関車の動力もこれである。
【魔力因子とは】
・魔力因子については解明されていない点が多い。
・わかっていることは、生き物が死ぬときに観測されること。天から日光と共に微量に降り注いでいること。属性があること。
・生き物が死ねば死ぬほど大量に観測され、死んだ生き物に魔法の才能があればあるほど大量に観測される。
・日本では古くから妖素と呼ばれており、他の国より質が良い傾向にある。
こんなところだろうか。
本当はもっと細かく設定していたが、作品に登場していたのはこの程度だったので、あまり参考にならないかもしれない。
この設定が登場した作品自体、下書き段階のものは保存してあるのだが、プロットと完成品が保存されておらず、中途半端なものしか手元にない。
申し訳ないが、これくらいで勘弁して欲しい。
話が変わってしまうが、久しぶりに自分書いた純度100%異世界モノを読み返すと、恥ずかしさもありながら、書き直して投稿しても良いかな。と少し思う。
作者の恥ずかしさゆえに、この小説のキャラクターたちの命はもう終わってしまったが、それは実に自分勝手だと思う。
できるだけ人間に近づけるようにと、汗水垂らして考えたキャラクターたちに愛がないわけではない。
むしろ、僕は僕の生み出した作品に登場する全てのキャラクターを自慢の子供だと思っているし、悪役であろうと、外道であろうと、愛している。
しかし、書いた作品を諦めることは、終わりを迎えさせずにやめてしまうことは、彼らを殺すことと一緒だ。
恥ずかしいからと一蹴して、無に返してしまうのはよくないだろう。
ということで、異世界嫌いの僕だが二年ぶりくらいに異世界モノを書こうと思う。
本当に今思いついたので、自分でもできるか不安だ。
下書きを参考にプロットを組み直しつつ、作品の構成を大幅に変えようと思うので、しばらく時間がかかりそうだが、やろう。
なので、上記の魔法理論を丸パクリしようとしていた諸君には申し訳ないが、あの魔法理論は僕が自分の作品で使う。残念だったな。お前らは自分で頑張って魔法理論を構築するこった。
というのもかわいそうなので、コメントしていただければ個別に相談に乗ろう。
さて、急な話の展開で申し訳ないがそういうことなのでよろしく頼む。
流れが急だが、まとめに入りたいと思う。
今回のエピソードから、少々ユーモアを入れつつ軽い印象が与えられるように書いてみたがどうだろう。読みやすくなっただろうか。
なろう系の作家に負け惜しみで揚げ足取りをされたくないので、このエピソードも含めて全てのエピソードを穴が開くほど見返しているのだが、僕の文章は非常に読みにくい。
読み返すたびに自分のことながらイライラしてくる。
なので、少しだけ軽くしてみようという試みだ。
是非感想を聞かせて欲しい。好評なら今後も軽めに書いていこうと思う。
途中から自分語りの日記のようになってしまって本当に申し訳ない。
この作品自体、特にプロットや下書き等はせずに思いつきで書いているので、今後もあのような脱線が起きてしまうかもしれないが、その際は是非暖かい目で見守って欲しい。
やっぱり見守らなくていい。甘やかさないでくれ。
次回はキャラクターのネーミングについて書こうと思う。
それでは次回更新までさようなら。
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