めくるめく栄光とその裏に隠された闇

あたかも本当に存在しているかのようなリアリティを持って描かれるロックバンド、ジー・デヴィール。売れないミュージシャンから瞬く間にトップスターに躍り出る彼らにはまばゆいほどの華々しさがあります。
しかしその裏側では彼らを闇に突き落とすような出来事の数々が降りかかり……。

ディスクに見立てた章構成、各話の内容とリンクした名曲のサブタイトルという音楽ファンならニヤリとしそうなパッケージの中で展開される物語は、一度聴き始めたらもっと聴きたくなる吸引力があります。話のテンポもよく、独特の重低音が効いているような文章。

ディテールにこだわり、細かいところまで丹念に描写されているのはロックスターの危うい日常やショービズ界の恐ろしさだけではありません。それぞれの登場人物の心の奥を痛いほどに突き詰め、読者に「そうだ、人の心とは確かにこうできている」と頷かせます。
生の苦しみを体現するような主人公と、激しい感情をぶつけながらも支え寄り添わずにいられない恋人たち。バンドの仲間として、愛しあう人間同士として、彼らの関係性はどこへ向かうのか。

テーマの一つである同性愛、頻繁に登場するセックスやドラッグシーンに眉をひそめる方もいるかも知れませんが、その先に描いてあることを読まなければ勿体ない。主人公が、そしてバンドが辿り着く境地には、この物語を追ってきてよかったと心底思いました。

濃密な人間ドラマを読みたい方にはお勧めの作品です。

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