川原の石ころと交通事故 5



─翌日




良太

「んん……ふぁあ~………おはよう。」


石達

『おはよう!』




う~ん……


まだ何か胸の辺りがモヤモヤ気持ち悪いなぁ……




─ガチャ



「おはよう良太。体はどう?」


良太

「まだなんだか吐き気がするよ……」


「じゃあ今日もお休みの電話いれとくわね。安静にしてるのよ?」


良太

「うん。」


「朝ごはん持って来るから、待っててね。」




翡翠

(あの札には、確かに健康の加護を付与していたんですが……軽くなったとは言え、まだ続いている……ますます嫌な予感がしますね………)










─朝ごはんを食べ終えて









金次

『う~む……』


コロ助

『どうしたんですか?金次さん』


金次

『良太坊の運気が、何故かとても悪くなっておる……』


『えっ!?本当なのそれ!』


金次

『何か、”嫌な気”がまとわりついているようじゃ……良太坊は滅多に悪運を引き寄せん体質なのじゃが……』


亀太郎

『し、心配なのらぁ……』


金次

『そして、今日改めて解った事がある。』


豪炎

『な、なんだ?』


金次

『あの、鑑定屋に行った日、良太坊のあの母親からも、”嫌な気”を感じたのじゃ。もしかすると、あの母親は何か妖しい力にとり憑かれておるのかもしれん……』


ローズ

『えっ!?』


琥珀

『あんだって!?』


翡翠

『ちょ、何故もっと早く言わなかったのですか!?』


金次 

『す、すまんのぅ……母親から感じた嫌な気は少しだけだったのじゃ。じゃから確証が持てんかった。じゃが、さっき母親から感じた嫌な気は、前より強くなっておった。


間違いなく、とり憑かれておるじゃろう。』


『じゃあ、もしかして私達を売ろうなんて事言ったのも、その変な妖しい力のせいなの?』


金次

『そうじゃ。』


コロ助

『うう……祓えればいいですけど、僕らじゃ何もできないですね……』


琥珀

『だが、良太に相談しようとも今良太は体調が悪いから、無理はさせたくねぇな………』


ローズ

『どうしましょう………』



良太

「う、うん…?」


豪炎

『おっと、良太が起きちまいそうだ』


翡翠

『今は、その話題はおいておくしかないですね………』




















「…………何か最近、お前おかしいぞ?」


「ふふふっ♪あら、どこがおかしいの?」


「………(おかしい……普段はここまで気分は高くない、それに目も虚ろになってる………一体、何が起こってる…?)」




良太の父は、最近様子がおかしくなった妻を見て、怪訝な表情をしながら眉を寄せていた。


父が感じていた胸騒ぎは、当たってしまう事になる。



愛しい息子を、脅かす出来事だった。










─昼過ぎ










─ふきふき、ふきふき




良太

「よしっ!ピカピカだね!最後はコロ助だね。」




良太がコロ助を手にした時だった。




─コン、コン



「良太~、話があるの~!ちょっといいかしら~?」


良太

「あっ、うん。いいよ。」



石達

『ついにっ……』



「あのね、良太。良太が集めてるその石達なんだけど……


売ってもいいかしら?」





良太 

「…………え?」




「だから、その石達を売ってもいい?良太の学費や生活費のアテにしたいの。」


良太

「なに……言ってるの…?…おかあさん……」


「この前、良太から石を借りたでしょ?試しに鑑定してもらったら、その石達、本物の宝石だったのよ!だから、売ってお金にしようと思って♪」


良太

「そ、そんなのダメだよ!!皆、大切な友達だもんっ!!売らないで!!」


豪炎・琥珀

『『良太……』』


「別にいいじゃない。また川原に行けばいくらでも同じ石なんて見つかるわよ。」


良太

「違うッ!!皆は……絶対に同じ物なんてないもん!ひとつひとつ違うよ!」


『そうよ!一個一個違うんだから!!』


「はいはい。でも、売った方が断然いいから持っていくわね。」




母親はコレクション箱を手にとりそそくさと持っていこうとする




亀太郎

『離すのら~!!』



─ガシッ!



良太

「やめてお母さん持ってかないで!!」


「良太、離しなさい」


良太

「やだぁあ!!」










─そして、階段にきた。







良太は、磨こうと手にしたままであったコロ助を握りしめながら、


呟いた。




良太

「……なんて……お母さんなんて………」


「良太、何か言ったかしら?」



─ドスッ!!



「えっ───」




母が振り返った瞬間、良太は母を突き飛ばした。


母は瞬く間に大き音をたてながら下へと階段から転がり落ち、


石達が散らばった。




─ドゴッガッ、ドン!



─ガラガラガラ!!



コロ助

『りょ、良太くん……!』




休みをとっていた父が、大きな音に驚き走ってきた。




「な、何の音だ!?………!?…りょ、良太!?まさか──」


良太

「お母さんなんて大ッ嫌いだッ!!」


父・石達

『「良太!!」』



─ダダダダッ!




父は、倒れる妻と走り去る息子、散らばる石達を見て、瞬時に何があったのかを察し、救急車を呼んだ。


そして、良太を追いかけた。




















僕はひたすら走っていた。


僕の心はもう、ぐちゃぐちゃだった。



皆が売られそうになって、悲しくて……


売ろうとしたお母さんが憎くて……


勢いでお母さんを突き飛ばした自分が、怖くて……



泣きながらとにかく走ってた。




良太

「う、ううっ……!」




気付けば交差点まで来てて、僕は、信号の確もせず横断歩道に走った。


遠くから車の音が聞こえて………



それで……それで………




─ギュイィーーッドォオオン!!



「きゃぁあああ!


「子供が……子供が轢かれちまったぞ!


「おい誰か救急車!救急車を呼べ!




慌て、ざわつく周りの所へ…




「良太ぁあああ!!………良、太…?……良太!!」




良太は血を流し倒れていた。


そして、良太を轢いた車は走り去っていってしまった。




「く、車が逃げたぞ!


「ひき逃げよ!ひき逃げ!


「救急車と警察はまだなのか!?


「良太っ!良太!!」




父は必死に心臓マッサージをしていた。


血まみれの良太の手には、コロ助が握られている。


コロ助は───




コロ助

『そ、そんな…!良太が……良太が死んじゃうなんつ嫌だよ!!…………


良太…皆……短い間だったけど、楽しかったよ!ありがとう!



神様お願い……僕の命と引き換えにでもいいから…………良太を、良太を助けてッ!!』




─その願い、受けよう




不思議な声が聞こえた瞬間だった。




─ビキッ!バキッ!!




そうわコロ助が音を立てて割れた。


そして同時に……




良太

「お………とう、さん…」


「ッ!良太!!待ってろ、今救急車が来るからな!」




そして、まもなく警察車両と救急車が来た。


良太は、救急車で病院へ搬送された。


その際、父は割れたコロ助を見つけ、ハンカチに包んだ。




















搬送された良太は、一命をとりとめ何と入院して1日で翌日には何故か傷が全て完治していた。


医者は、目が飛び出る程驚いたが、完治しているのはしている為、


すぐに退院する事となった。



そして、父から砕けたコロ助を見せられた良太は、泣いて泣いて、崩れ落ちた。


良太には、やはりコロ助が自身を身代わりに自分を助けてくれたのだと解った。


そして、家を飛び出す前に階段から突き飛ばした母を気にかけていた。






良太

「お父さん……お母さんは……」


「大丈夫だ。幸い打ち所が良くて、2、3日入院すれば退院できるそうだ。」


良太

「そっか………」


「謝れば、許してくれるさ。明日、入院してる部屋にお見舞いに行こうか。」


良太

「うん………僕、ちゃんと謝るよ。」










─帰宅して……










『良太!!大丈夫なの!?』


翡翠

『良太くん!』


良太

「……皆…ただいま。ちょっと、車に轢かれちゃったけど……助かったんだ。」


ローズ

『そうでしたのね……良太さんが助かって良かったですわ……』


豪炎

『あれ、それにしては何か退院すんの早くないか?』


琥珀

『確かに……それにコロ助はどうしたんだ?』


亀太郎

『居ないのら?』


金次

『む………良太坊……もしや……』




良太は黙ってズボンのポケットに入れていたハンカチを広げた。


ハンカチには砕けたコロ助が包まれていた。




『っ……!!』


ローズ

『コロ助さん!』


翡翠

『そんな……』


豪炎

『轢かれちまった時の衝撃で、砕けちまったのか……?』


金次

『………コロ助の生命運に陰りがでておったのは、これじゃったのか……』


琥珀

『……コロ助…』



良太

「きっと、僕を助ける代わりに自分が犠牲になったんだと思う……


聞こえたんだ……コロ助が、自分を身代わりに僕を助けてって神様にお願いしてたのが………」



石達

『…………………』















─翌日










良太

「……お母さん。」


「……!良太………」


良太

「酷い事して!ごめんなさい!」




良太は母に深く頭を下げた。


母は苦笑いして、




「いいの。私、何か変だったし、良太が石達を凄く大切にしてるのを、知ってたはずなのに……


売ろうとしたお母さんが悪いの。だから、頭を上げて?」


良太

「お母さん……ぐすっ………」




金次

『うむ。もう母親からは嫌な気を感じらん。大丈夫のようじゃ。』


ローズ

『良かった………』


翡翠

『それにしても、良太くんのお母さんはなぜ……いや、何にとり憑かれていたんでしょう?』


金次

『う~む……それについては解りかねるのぉ……』


『そうなの……』


豪炎

『ま、今は置いといて、一旦は一件落着ってことでいいんじゃないか?』


琥珀

『コロ助は死んじまったが、おかげで良太は生きてる。あいつを祈ってやろうぜ。またいい生を受けれるように。』


亀太郎

『そうら~。皆で祈るのら~!』




共に持って来ていたコレクション箱の中の石達は、


良太を救ってくれたコロ助に祈りを捧げた。


勿論、良太も心の中で祈った。










─1ヶ月後…










良太の学校の帰り道




???

「……ぅん…くぅん…」


良太

「うん?」




あれ?近くから子犬の鳴き声がする……



僕は辺りを見回した。


すると……




良太

「あっ!子犬!」


子犬

「くぅん!わんっわんっ!」


良太

「可愛いぃ~…!」




小さな子犬が、段ボールに入れられて捨てられていた。



可哀想に……



でも、なんだかこの子犬……初めて会った気がしないなぁ…何でだろう?


しかも……



毛が黄緑っぽくて所々白くて尻尾と耳がシマシマ………




良太

「もしかして……コロ助なの?」


子犬

「わんっ!」




子犬は肯定するように鳴いた。










良太は急いで子犬を家に持ち帰り、この子を飼いたいと両親にお願いした。


両親は、ちゃんとお世話をするならと頷いた。


子犬は良太に何故かとても懐き、いつもついて回った。



子犬……もといコロ助は、平べったい感じの籠に石達を乗せ、今日も良太と散歩に出掛けるのだった。








by 作者


これにて、『川原の石ころと交通事故』は終わりです!


続きを書いてほしい!等のリクエストが多数あれば単体の作品としてだそうと思います。


あともう2つおまけで、後日談番外編を投稿しようと思います。


次回の後日談番外編は、


ある日街に次々と起こる不幸や不吉な出来事……


幸運体質の良太がなぜ、交通事故に会うような悪運を引き寄せてしまったのか、


母親にとり憑いていた妖しい力の正体とは…!?


そして新しい石も登場!


なお話となっています!お楽しみに☆



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ちょっとだけ霊話 舘川 ハナミ @373737

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