僕らは何に為れるのか。何を成せるのか。怪異の謎を解く現代風・妖怪奇譚。

 ありふれた高校生活を送っていた幼馴染三人――離宮涙人、延生凱斗、志場神羽花――が、ふいに現れた異形に襲われ、『妖魅』と呼ばれる妖怪の世界へと引き込まれていく、現代ファンタジー。

 園芸を愛する涙人、野球に情熱を燃やす凱斗、病弱で疲れやすい羽花。性格も好みも違うけれど仲の良い三人は、神戸ルミナリエの初日に阪急神戸線・花隈駅にて、非常に奇妙でおぞましい姿の怪物に襲われます。
 少年二人は羽花を守ろうとするも、得体の知れぬ相手に戦うすべもなく大怪我を負わされてしまい、そこに現れた年配の男性に助けられるのですが。その後、三人は、人生を左右する決断を迫られることになるのでした。

 物語は三人それぞれの視点を交代しながら、妖魅と関わることによって生じた少年少女の内面変化を、丁寧に書きだしてゆきます。
 写実的で世相を反映しつつ描かれる現代社会の裏側に、現代に生きる妖魅たちの世界が息づいている。そんな日常と隣り合わせの怪異が現実に侵食してゆく様は緊張感がありますが、登場キャラたちはやわらかく個性的で、女性キャラは可愛らしいです。
 冒頭に現れた異形が、どんなふうに物語と関わってくるのか、少年少女はどんな決断をくだすのか、興味は尽きません。ぜひご一読ください。

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