怖くないホラー、なぜならば……


 ホラーの短編集です。三つの話が入っていて、特に一話目はそんなに怖くないです。
 短編小説なのですが、ひねったオチとか、おどろきの急展開とかはありません。そればかりか、ホラーだからと読者を怖がらせようともしていません。そういうのを期待すると、ちょっとスカされます。
 ですが、一話目二話目と読んでいくうちに、この世とあの世の境界がすこしずつ曖昧になってゆき、一番最後にその理由が明かされます。
 これは人を怖がらせるためのホラーではなくて、もしかしたら作者自身の恐怖をやわらげるための癒しかも知れません。
 恐怖とは、もしかしたら人の心の中にしか存在しない波紋のようなものなのではないでしょうか。