運命を示す羅針盤、その示す先を愛と共に変えてゆけ——

 船乗りを生業とする男、ジェイクはある夜一人の美しい娘に出逢う。
 複雑に絡み合う運命の元、出逢ってしまった二人。何やら事情を抱えている少女、ユーリに待ち受けているのはあまりにも過酷な運命だった——。

 年若く美しい、けれど気高くてまっすぐな心を持つユーリ。悲壮感を感じさせず、淡々と、しかし運命に抗う意志を見せる姿は誰よりも強い。
 そんな彼女を支え、「信じろ」と言葉をかけ共に海の旅へと出るジェイク。

 道中語られる、ユーリの一族の秘密。竜の島という場所。風を纏う精霊や、ユーリに恋をするある国の王。
 共に旅をする彼らは危うい一面も持ちつつ、なんとも魅力的で目が離せない。
 航海という荒波の中、彼らに訪れる様々な試練や選択。そして付き纏ってくる運命の真実。

 しっかりとしたファンタジーの世界観の中に、人間模様が織りなすどこか花の香りが風と共に漂ってきそうな蕩けるロマンス。
 あまりの魅力に、登場人物の誰も彼もに、祝福の風が訪れるよう願わずにはいられないほど!
 美しい文体で紡がれる物語に、ついつい時間も忘れて読むのが止まらなくなってしまう。

 羅針盤の針が示す先は暗い海の底か、それとも——。
 錨を上げろ、風をその両の手に感じて帆を張れ。その海と眩い愛の先に、きっと答えはあるはず。

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