第13回 盛大に遅刻しました。
ああ、なんでこんな事に。
昨夜までは平和だった。稲刈りが終わった佐賀。ふうちゃんから(※1)『今日の朝、空見たらバルーンが飛んでたー(~▽~@)♪♪♪』って写真付きでL〇NEが来た。
だから今日は、朝早く起きて空を見たら、バルーンが飛んでるんじゃないかってウキウキしていたのに……。
二階の窓から見下ろして見たものは、ゾンビだった。
ゾンビランド・Saga。
「いやマジモンのゾンビいらねーし!!!」
アイドルでもないゾンビとか大量発生のイナゴレベルでいらないわ!
そう叫んだ時、ふうちゃんから電話が掛かってきた。
「あ、ふうちゃん!!? 今家の前にゾン」
『肥前さん、(※2)肥前さん、みかんの品種はあんみつ姫だよ!』
「いや今それ言うことかなぁ!!!?」
しかもその話題、一週間前のヤツだよね!?
L〇NEで「こないだミカンが出てたんだよー。佐賀ってみかんの生産量全国5位だって言うけど、品種とかよくわかんないねー」って言ってたヤツだよね!
「そんなことより、今家にゾンビいるんだけど!!」
『え? 何?
「自分の頭がおかしくなったんじゃないかとも思うけどさー!!」
とりあえず写真を撮って送信する。
するとふうちゃんが、『ギャァァァ!』と電話先で叫んだ。
『何あのゾから始まってビで終わるようなヤツ!!』
「よかった、私の幻覚とか妄想とかじゃないんだね……」
そう言って、いや全然よくねぇぞ、と自分で突っ込む。どう見たってあのゾンビたち、我が家に押し入ろうとしている。いずれ侵入された時、2階にいる自分は逃げられない。
そう考えて、何か家に武器がないか調べようとした時。
「(※3)燃やし尽くしてロンリーナイトォォォォ!!」
ぼおおおお! と、激しい音がした。
庭を見下ろすと青い炎の柱が立ち、ゾンビたちを塵も残さず燃やし尽くした!
出火させたのは、隣に住むリチャードさんだ。
「ふう、とんだBBQだぜ」
「リチャードさん!」
「お、肥前さん。無事だったか」
「お陰様で! でもこれ、一体どうなってるんですか?」
「見ての通りだよ。ゾンビがSagaを覆い尽くしている」
リチャードさんは重々しく言った。
「何故ゾンビが出たのかは、俺にもわからん。ただ言えることは、このままだと俺たちもゾンビになっちまうということだ。一刻も早い解決が求められている」
「なんて説明の速い……」
まるで1クールでセカイ系やろうとするオリジナルアニメ並の速さだ……。
「説明に手間取ってると字数足りなくなるからな。某掲示板によると、吉野ケ里遺跡が怪しいらしい。まずはそこへ向かうぞ」
「説明ラッシュッ!!」
という訳で、私とリチャードさんは武器を持って吉野ケ里遺跡へ向かった。
行く先々で待ち伏せし、襲いかかってくるゾンビたち。それを燃やしては消すリチャードさん。
途中でガンナーを名乗る
(※4)「てめーら、人間じゃねえ。叩き切ってくれるわ」
波里さんが剣を構える。そりゃゾンビだもんね。元人間ではあるだろうけど……。
「なっ……(※5)その構えッ、甲源一刀流かッ!?」
ガンナーである裕介さんが、波里さんの剣を見て驚く。何それ。
「そうだ。陳頻組の一つ、『切落』だ」
なんかかっこつけてるけど、これ書いている人剣道全然わかんないから。真に受けないでね、読者の皆さん。詳しいことは波里久さまに尋ねて。
作者なんて、頑張って描写しようと思ってYou〇ubeでいろんな剣形を見ても、「全部同じじゃない?」って思ったみたいだから。
――とまあ、メタなことは置いておいて。
「ついたぞ。ここが吉野ケ里遺跡だ」
ようやく目標地点である吉野ケ里遺跡に到着。
吉野ケ里遺跡の門から、ゾンビがゆっくりと出ていく。
「どうやらこのゾンビたちは、甕棺で眠っていた弥生時代の人々らしい」
「道理で身に着けてる服が貫頭衣なわけです」
多分骨になって久しい人たちのはずだが、多分マッドサイエンティストがうにゃうにゃやって肉付けたんだろう。
――だったら腐りかけじゃなくてしっかり肉付けなさい‼ かわいそうでしょ!
「ところで、弥生時代の服ってもっと色がないと思ってたんですけど、割かしカラフルですね?」
勿論一般の人らしき人は色味のない麻布なのだが、偉い人らしき専用の服は赤色や紫など、中々カラフルだ。服も絹っぽい。
「絹って、中国からの輸入品なのかな?」
日本の養蚕が活発になったのって、明治の富岡製糸場が出来てからだよね?
そういう私に、波里さんが、いや、と否定した。
「日本もこの時代には既に養蚕は行われていたんだ」
「え、そうなの?」
「まあ、蚕自体は輸入品だし、品質的にも生産的にも中国にゃ負けてたけどな」
良い生糸が日本でも作れるようになったのは江戸時代ぐらいだ、と裕介さん。
「染色の技術もあったらしい。日本茜と貝紫で染めた服が見つかっている。特に貝紫はヨーロッパやエジプトでは見られるんだが、中国……東洋では動物性染色はないものとされていたんだ。ところが吉野ケ里遺跡では、貝の色素で染められた布が発見されたんだよなー」
「ちなみに、西欧では貝紫は高貴な人間しか使っちゃいけないことから、王家に生まれた人間のことを“born in the purple”って言ったりするんだぞー」
「へぇぇぇ……」
突然のお勉強タイムに戸惑いが隠せない私。
しかし、ゾンビたちは私たちに気づかないみたいで、そのまますぎていく。
「なんか、襲ってきませんね? ゾンビたち」
「ああ、鍬や鋤を持って、どこかへ向かっているな……」
その時、リチャードさんが「うおっ⁉」と叫んだ。
「あの弥生ゾンビ……、
トラクター走らせてるぞ!!!!!」
「「「な、なんだって――――⁉」」」
なんということでしょう。
弥生ゾンビは、真っ赤な農業用トラクターに乗って走っているのです!
「ああ! あのトラクターを見ると、なぜか頭にあの天気予報の双子のキャラクターが!」
「いけない、それ以上はいけない! いろいろな意味で怒られる!!」
波里さんにたしなめられて、私はとりあえず、吉野ケ里遺跡へ足を踏み入れたのだ……。
■
(※6)「お掃除お掃除~♪ ゴミはまとめて絨毯の下に隠してやれ~♪」
箒を持った人がいた。ゾンビじゃなくて、れっきとした人だ。箒を持っているんだから、多分ここの清掃員なんだろう。名札には『三枝優』と書かれている。
箒で掃いているというより、何か埋めているように見える。
……というかそれ。
「竪穴式住居の竪穴埋めてない⁉」
絨毯に見えたそれは、葺いたはずの屋根がぺちゃんこになったものだった。
慌てて私たちはつぶれた屋根をどかす。 すると、竪穴にはゴミゴミとしたゴミが積み上げれていた。貝塚もびっくりの埋め立て。
それすらどかすと、そこには、明らかに人工物な鉄の扉が。
扉を開けると、地下へと降りる階段が見えた。
この清掃員さん、ずいぶんなものを埋めてるなあ⁉
「も、もしかしてこの扉は、漫画や映画によくある地下にある研究所への……⁉」
私たち四人は、目を見合わせる。
そして声をかけるわけでもなく、私たちは、地下へ行くことにした。
地下に降りると。
培養液らしき液体がつまった、巨大な試験管。怪しげな機械。
いかにもな研究所に、想像もつかなかった人物がそこにいた。
「(※7)やあ、久しぶり。
肥前さん」
「そんな…………どうして!
ふうちゃんが!!」
そう。
研究所には、朝に電話していたふうちゃんがいたのだ。しかも白衣を着て。
間違いない。ふうちゃんこそが黒幕。
でもどうして……?
ふうちゃんは慈愛に満ちた笑みを私に向けていった。
「ねえ、肥前さん。このSagaは、……いや、人間は堕落したと思わないかい?」
「堕落……?」
「貪るだけ貪って、それなのに野菜や穀物を安く買いたたき、おまけに無農薬だの有機栽培だの高品質なものを求めようとする。枝豆と大豆が一緒であることすら知らないのにそれを恥とも思わない、土から離れた人間はなんとまあ傲慢であるか。おまけに『佐賀ってなんもないよねー』と言う始末」
「なんか私怨入ってない?」
主に作者の。
「田んぼと畑を『何もない』と断じる、愚かな現代人に鉄槌を。
そして人間の住む場所を蜜柑に変えることで、自給率もアップ。
その為に僕は、時代を遡り出来立てほやほやの弥生時代のご遺体をゲット、現代にゾンビとして蘇らせ、このSagaの地を再び農耕の地として蘇らせるッ!!」
「なっ……!」
そのあまりにもな目的に、憤った私の視界は真っ赤に染まった。
「そんな、そんなことのためにご遺体を弄ぶようなこ「時代をさかのぼってって……
井戸か?」
「(※8)井戸を通ってタイムスリップだって?
タイムスリップって言ったら、机の引き出しに入ってするものだろ。何言ってるんだ」
「あー、俺2016年に戻って(※9)エブリワンの焼きたてパンが食べたいなー」
「ごめん後ろの三人黙っててくれないかなぁ⁉」
今タイムスリップの手段を講じる必要はないと思う!
気を取り直して、私はキッとふうちゃんを睨む。
「そんなことのためにご遺体を弄ぶようなこと、許されると思ってるの⁉」
「どうして? 彼らは人間じゃない。そもそも、思考する能力もない。人工知能と一緒」
その途端、ガシャン!! と天井から檻が降ってきた。
「!」
「(※10)くっくっくっ、これぞ飛んで火にいる夏の虫、ちなみに僕は本の虫。狙い通りここに来てくれたね、肥前さん」
格子の向こうで、無邪気に残酷に笑うふうちゃん。
「そう、最初から君が狙いだったのさ、肥前さん。これからの人類は農耕社会に回帰する」
ふうちゃん、まるでどこぞの悪の組織みたいに詩的で中二的な言い回ししてる……!
「余計な人間はゾンビとなって農業に携わり、必要ないときは穀物のこやしとなる。君はその第一号として、新たな時代の礎となるんだ」
ふうちゃん、滅茶苦茶親切に色々説明してくれる……!!! まるでバトル漫画の悪役みたいに……!
そうツッコミたかったけど、私は友人に裏切られたショックで何も言えなかった。
格子の隙間から伸びてくる腕。
その腕は、私の首を掴もうとして……。
「そこまでだ」
聞いたことのある声。
私は恐怖で閉じていた目を見開いた。
そう。
特に寺生まれでも霊力もない
ちなみにTさんの両脇には特に妖怪を退治しない琥珀さん、そしてアメさんがいる! Tさんは隣、琥珀さんはお向かい、アメさんは二軒先に住む人たちだ!
「よくも私のタイムマシーンを無断で使ってくれたわね! 戦国時代から中々帰れなかったわよ!」
アメさんは怒り心頭といった感じでふうちゃんを責めた!
どうやらアメさんのタイムマシーンをふうちゃんが勝手に使っていたらしい。
するとふうちゃん、苦虫を嚙み潰したような顔でこう言った。
(※11)「ロンロン、言ってて、ロン破できないから。いや、むしろロン破しないで」
そういった途端、ドロン!! と研究所に煙が立ちこむ。
「今日はここまで。(※12)一昨日会いましょう」
煙が消えた時、ふうちゃんの姿はなかった……。
アメさんがタイムマシーンで弥生ゾンビたちをもとの時代に戻し、Tさんがなんかこううまく死者を眠らせ、Sagaは佐賀として無事平穏を取り戻した。
琥珀さんは友人に裏切られた私を慰めてくれた。
琥珀さんに慰められながら、私は、
特に今回のお話、時間がかかった割には面白くないって言われそうだなあ……と、フォロワー様からのお叱りを覚悟するのだった……。
※1……野林緑里さま「今日の朝、空見たらバルーンが飛んでたー(~▽~@)♪♪♪」
※2……百瀬ふう様「肥前さん、みかんの品種はあんみつ姫だよ!」
※3……リチャード三太郎さま「燃やし尽くしてロンリーナイト」
※4……ゆうすけ様「てめーら、人間じゃねえ。叩き切ってくれるわ」
※5……波里久さま「その構えッ、甲源一刀流かッ!?」
※6……祟さま「お掃除お掃除~♪ ゴミはまとめて絨毯の下に隠してやれ~♪」
※7……三枝 優さま「やあ、久しぶり。」
※8……無月弟さま「井戸を通ってタイムスリップだって?
タイムスリップって言ったら、机の引き出しに入ってするものだろ。」
※9……無月兄さま「エブリワンの焼きたてパンが食べたい」
※10……関川 二尋さま「くっくっくっ、これぞ飛んで火にいる夏の虫、ちなみに僕は本の虫。」
※11……アメリッシュ様「ロンロン、言ってて、ロン破できないから。いや、むしろロン破しないで」
※12……蒼翠琥珀さま「一昨日会いましょう」
近況ノートはこちら!
【終了!】第13回! フォロワーさまが残す一文を使って物語を書きたい【そろそろ新しい要素が欲しい】
https://kakuyomu.jp/users/misora2222/news/1177354054935288491
大変時間がかかりました。 今回もご参加ありがとうございました。
そして百瀬ふう様、申し訳ございません。
フォロワーさまの一文で物語を作ってみた 肥前ロンズ @misora2222
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