第12回、『鍋島の猫又騒動』って知ってる人いる?~猫にチーズは与えちゃいけないんだにゃ~
この日本に、まだ侍がいた頃ーー。
佐賀城にて、鍋島無月(弟)と龍造寺リチャード三太郎が、囲碁を打っていた。
「そういや(※1)『はなわ、がばいばあちゃんに続く佐賀県フィーバー起こらないかな』って兄が言ってた」
「え、無月(兄)様が?」
「やっぱゾンビかな?」
「ゾンビぐらいかな……」
ちなみにこの二人の仲は、仲良さそうに見えてとても複雑なものである。
今の肥前=ロンズ国を纏めあげるのは、佐賀藩藩主鍋島
しかし元々龍造寺一族は鍋島一族の主君だった。言わば下克上しちゃった状況。
うっかりすると、かつての主従関係を思い出して、お互いの不満が爆発したりして……。
▪
一方、龍造寺リチャード三太郎の家。
猫のタタリは、庭の塀の前で困っていた。
「みー!【(※2)ママー! お腹すいたよ、ママー!! あ……ママはもう……いないんだった……ママはあの日、性転換手術を受けるとか言い出して……次に見たママは妙に胸毛が濃かったんだにゃ】」
ひとつの鳴き声で長い説明口調のタタリ。
猫のタタリの飼い主であり、リチャード三太郎の母親であるまり子は、まあそんな感じで不在だった。現在まり子は名前を変えて『
誰もいない家で、お腹を空かせるタタリ。
【リチャードも鍋島家から帰ってこにゃいし。どこで道草くってるんにゃ】
はあ、とタタリがため息をついた時。
『ごはんが、欲しいか……』
タタリの前に、聞いたことの無い声が聞こえた。それはとても神々しい声だった。
【欲しいッ……! 野菜とささみをあんかけでまぶしたご飯が欲しいにゃ! 料理してくれるんにゃ!?】
『妙に具体的だな……しかし、(※3)ふふふ、料理はしない』
『(※4)これを付けると飛べるよ』声はどこからか鈴の着いた首輪をタタリにつけた。
『これは飛行能力を持ち合わせたもの……さあ暴れ呑み貪食せよ!!』
【なんかよくわかんにゃいけど、行ってきまーす!】
こうして飛行能力を手に入れたタタリは、城下に解き放たれたのだった!
▪
一方、佐賀城では。
「そろそろ(※5)寒いし古湯温泉に行くか」と無月(弟)の言葉に、リチャード三太郎が「いいね~」と和やかに対応していた。
だがしかし。
「島の温泉とかもいいよね、長崎の天草諸島とか」
そう言う無月(弟)に、リチャード三太郎は訂正した。
(※6)「ちょっと待って、天草諸島は長崎の一部では、ないよ~」
……その言葉を皮切りに。
彼らは、決闘を始めた。
「何でだよ天草四郎っつったら長崎じゃねーか!」
「それ殉教地! 彼産まれたの熊本だっつーの!!!」
刀を切り結ぶ無月(弟)とリチャード三太郎、
……の、親である鍋島雄亮と龍造寺賢(元・まり子)。
そう、子供が頼んでいないーーというか喧嘩してないにも関わらず、親がしゃしゃり出て喧嘩をおっぱじめたのである!!
「ど、どうしよう親たちを止めないと!」
「いやもう、この際だから思う存分やらせたら?」
無月(弟)の言葉に、騒ぎを聞きつけた無月(兄)が呆れながら言った。
「もうこれで何度目か数えたくないほど勝手に喧嘩してんだから、やり尽くすまで放っておいた方がいいよ」
「いっそのこと、試合のBGMを流して盛り上がろう」そう言って無月(兄)がスピーカーから流そうとする。
その間、親同士は、間をあけて睨み合っていた。
(※7)「おーっと、こいつはぶったまげたぜ。もう少しでおしっこ漏らすところだった」
「ふふ、貴殿も中々だな。だが、ここでその賞賛を漏らすのはどうかと思うぞ」
不敵に笑う雄亮に、不遜に笑う賢。
再び構え直し、賢はこう言った。
(※8)「普段人は能力の三割しか使っていない。だが俺は残りの……」
賢のセリフの途中で、丁度無月(兄)がつけたBGMが流れ出した!
『あんたがったどっこさ、肥後さ、肥後どこさ、
「……」
「……」
刀を持っていた腕を下ろし、呆然と無月(兄)を見つめる雄亮と賢。
『熊本どっこさ、船場さ♪』
「おい無月(兄)、BGM止めろ」
『船場山にはタヌキがおってさ♪』
「え、なんで。『でんでらりゅう』が良かった?」
「違うわドアホ! 気が削ぎれるってんだ!」
「あー、天気が良かった?」
確かに今日雲ひとつないもんね、と無月(兄)。どこからも無く蝶々も飛んできている。
「決闘にはおどろおどろしい雲が必須だもんね」
そう言って、無月(兄)は、
「仕方ない。鰯焼こう」
七輪で鰯を焼き始めた。
魚を焼いたことにより、おどろおどろしい雲もとい煙が、雄亮と賢の肺を襲う!
「ゴホゴホゴホ! ばっっか! お前バカか! 腹減るわ!」
(※9)「うるさい!その鼻を閉じておけ!」
『煮てさ、焼いてさ、食ってさ♪』
「だからBGM止めろっちゅーねん!!」
呑気な童歌BGMに、香ばしい焼き魚の匂いがする戦場。その時!
【美味しそーな焼き魚の匂いがするにゃぁぁぁぁぁぁ!】
ガブっと、飛行能力を手に入れた猫のタタリが、大きな顔をして飛んできた!
「なんだあの大きな顔をした化け猫は!」
リチャード三太郎の問に、そばに控えていた家臣の百瀬と関川が答えた。
「あれは城下、主に食事処を荒らしている『空飛ぶ化け猫』です!」
「無銭飲食をするため、その被害は甚大なものであります!」
「おまけに顔だけにカロリーがいったそうです!」
「ああ、あれは!」
「どうしたのリチャード殿!」
目を見張るリチャード三太郎に、今度は無月(兄)が尋ねる。
「あれは……タタリ、我が家の猫です!」
「気づかなかったの!?」
「あー、(※10)偶然予期せぬ場所で会ったら、知り合いでも誰だか分からなくなる事ってありますよね。うん」
無月(弟)は何故か妙に納得していた。
「タタリちゃん、どうしたの!?」
賢も化け猫の正体が自分の飼い猫だと気づき、顔色を変える。
しかし食欲の獣と化したタタリに、その声は届かない。
タタリの呼吸は最早ダ〇ソン並の吸引力を発揮していた。
「あ、(※11)今ね、カマンベールチーズ食べてる。どこにあったんだ、あれ」
「ああ、家臣の
【(※12)ぼくが気に入っちゃったから~、仲間に入れるの♥️ にゃ♡】
「いけない……そろそろなんとかしないと、もう2500字超えてしまう!」
ついには、(※13)「そーゆー大事なことは、生まれる前に教えといてくれよ!」というフォロワー様の一文すら、タタリに吸い込まれていく。
「どうしよう本格的に作者が投げやりになってきたよ!?」
「このままだと、『オチ』も吸い込まれかねん! どうするんだ!」
その時だった。
突然タタリの身体がピタっと止まり、しゅるしゅると音を立てて顔がしぼんで行ったのである。
【もう、食べられないにゃ……】
カマンベールチーズに埋もれて満足そうな顔で地面に眠るタタリは、普通の猫に戻っていた。
その傍では、先ほど吸い込まれかけた久留隈が、土埃を払っている。
「く、久留隈無事だったのか!?」
「ええ、殿。どうやらこの猫が暴走した理由は、この鈴の首飾りが原因のようです」
そう言って、久留隈は握りしめた鈴の首飾りを見せた。
どうやらこの鈴の首飾りは、空が飛べる代わりに極度の空腹感を与えてしまうのだという。それを、久留隈は間一髪で外したのだ。
大人しくなった猫のタタリは、それからは賢・リチャード三太郎親子が作る美味しいねこまんまを食べて、何時までも幸せに暮らした。
これが、後の世まで語り継がれる、『鍋島化け猫騒動』のお話である……。
(※1)……無月兄さま『はなわ、がばいばあちゃんに続く佐賀県フィーバー起こらないかな』
(※2)……祟さま「ママー! お腹すいたよ、ママー!! あ……ママはもう……いないんだった……ママはあの日、性転換手術を受けるとか言い出して……次に見たママは妙に胸毛が濃かった」
(※3)……アメリッシュ様「ふふふ、料理はしない」
(※4)……リチャード三太郎さま「これを付けると飛べるよ」
(※5)……郭隗の馬の骨さま「寒いし古湯温泉に行くか」
(※6)……白浜 台与さま「ちょっと待って、天草諸島は長崎の一部では、ないよ~」
(※7)……ゆうすけ様「おーっと、こいつはぶったまげたぜ。もう少しでおしっこ漏らすところだった」
(※8)……関川 二尋さま「普段人は能力の三割しか使っていない。だが俺は残りの……」
(※9)……百瀬ふう様「うるさい!その鼻を閉じておけ!」
(※10)……無月弟さま「偶然予期せぬ場所で会ったら、知り合いでも誰だか分からなくなる事ってありますよね。」
(※11)……かしこまりこ様「今ね、カマンベールチーズ食べてる。」
(※12)……野林緑里さま「ぼくが気に入っちゃったから~、仲間に入れるの♥️」
(※13)……くるくま様「そーゆー大事なことは、生まれる前に教えといてくれよ!」
近況ノートはこちら
【終了!】第12回!フォロワーさまが残す一文を使って物語を書きたい【なんと13人!!!!】
https://kakuyomu.jp/users/misora2222/news/1177354054934562239
オチは『オチが吸い込まれた』にしようと思いましたが、それは怒られそうなのでやめました。オチ見失ったけど。
フォロワーさま、今回もご参加ありがとうございました。
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