第129話 そういう所だぞ? 寺原?
「はむっ……ムシャムシャムシャ……パクパクパク……ガツガツガツ……」
「…………」
「ゴクゴクゴク……ぷはぁー!!! これ美味しい!
「急にそんな食べたり飲んだりして大丈夫? 後で吐いたの処理するとか嫌だよ?」
「大丈夫! サツキ今、いくらでも食べられそうだから!」
あの寺原が遠慮することなくこの食べっぷりって、よほど腹が減っていたんだな。
一旦飯を食わせようと提案した張本人は俺だけど、寺原のがっつきっぷりに結構引いてた。
ああ……麗翠に作ってもらった特製ブレンドの紅茶が……寺原にがぶ飲みされているよ。
俺のだったのに。
「いったい、宮殿内では何を食べさせられていたんだ……?」
「……
「ほら、言わんこっちゃない……」
どうやら俺は、寺原のトラウマを抉ってしまったようだ。
えづきながら、ゴミ箱へ盛大に吐いている。
そんな寺原を見て、麗翠は呆れながら寺原の背中をさすっている。
俺に連れて行ってくれって頼んだあの日から、寺原の身に一体何があったんだ?
思い出しただけで吐くとか、絶対に普通じゃねえよ。
「はぁ……はぁ……せっかくお腹いっぱい食べさせて貰ったのに……半分ぐらい吐いちゃった。ごめんね? 麗翠ちゃん?」
「急に食べるなって私はちゃんと言ったよね? もう作ってあげないから」
「うわーん! ゴメンね! でも、サツキが悪いんじゃないの! 上野くんが変なこと思い出させるから〜!」
「……うっざ、何コイツ……」
怖っ。
麗翠は聞こえないようにボソっと言ったつもりなんだろうけど、バッチリ聞こえちゃった。
俺もその意見に同意見だけどね。
セトロベイーナ王国で捕虜になる前の、自分の行動がどんなもんだったか自覚していれば、こんな言動にはならないはずなんだよな。
「聞いてよ! 麗翠ちゃん! サツキが残飯食べさせられ始めたのも、あんな地下に閉じ込められるようになったのも、全部、上野くんのせいなんだよ!?」
「は? なんで俺のせいなんだよ?」
「ちょっと、とぼけないでよ! サツキがついて行きたいって言ったのを、上野くんが断った後、宮殿内にいる騎士に見つかって、脱走したと勘違いされたんだから! 質素なご飯と普通の部屋って生活が幸せだったんだな……って思えるくらい酷い目に遭ったよ!」
「コイツ……馬鹿じゃねえの?」
「馬鹿!? 酷い! 馬鹿って言った!」
「…………」
見つかった時にもっと酷い目に遭うから、見つからない内に元いた場所に戻っておけよ? ってセトロベイーナ王国を離れる時に、俺はちゃんと忠告しただろうが。
馬鹿だな本当に。
お前が馬鹿だと思ってないのは、自分だけだぞ寺原。
麗翠も呆れて黙っちゃってるだろ。
麗翠が呆れて黙るって相当だぞ?
関わりが深い俺ですら、そこまで麗翠を中々呆れさせねえわ。
「……私、寺原さんが吐いたやつの処理とか、食器の片付けとか色々あるから、あとはお願いね
「お、OK……分かった」
これ麗翠さんキレてますね。
結構マジでキレてますよ。
寺原にその自覚は……。
「片付けもやらせちゃってゴメンね? 本当、麗翠ちゃんは良いお嫁さんになるよ〜」
あ、やっぱり自覚ねえわ。
というか、麗翠の寺原への態度で俺も今思い出したけど……。
そもそも元の世界で麗翠って、寺原のこと嫌いだったわ。
やっべ、今更思い出したよ。
(「
ああそうだ。
元の世界で寺原を見捨てたのって、寺原にお前が余計なことをすると扱いが酷くなるから、余計なことをするなって言われたのと、麗翠のこの的確な発言で、寺原って助ける必要がない人間じゃね? って気づいちゃったんだよな。
そんな奴に反省とか期待する方が馬鹿か。
「俺が悪かったよ寺原。こうなってしまった以上、もうセトロベイーナ王国には二度と戻りたくないよな?」
「当たり前だよね? 餓死する寸前だったんだから」
「じゃあ、アルラギア帝国に戻らないか?」
「……え?」
この提案は予想していなかったのか、寺原は面食らった様子だった。
それだけじゃない。
コイツマジか……と言いたげにイラついた表情を見せる。
「ちょっと……本気で言ってる?」
「本気で言ってるが?」
「ようやく
「岸田達の荷物持ちに逆戻りってことは、無いから安心しろ。
「……神堂くんを怒らせた?」
「とぼけるなよ? お前も荷物持ちとして同行していたんじゃないのか? 神堂の仲間……そして俺達の元クラスメイトでもある
「…………」
都合が悪くなると、すぐこれだ。
こういう所も嫌われる要因なんだろうな。
そういえば、神堂と岸田がそろそろ戦い始める頃かな?
女神殺しのレフトオーバーズ~虹の女神(バカ)に召喚された七組の勇者パーティー~ 石藤 真悟 @20443727
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