突然戦国時代にタイムトリップしてしまった主人公とその姑。語り手が男性ではなく女性であるところがまず面白いです。現代を生きる「普通の主婦」が、リアルな世界では天敵であるはずの姑と力を合わせて生き抜かねばならないというシュールな設定もユニークです。
戦国時代という状況にあたふたし、あまりの生き方の違いに唖然とし、姑や周りの人間の突飛な言動に思わずツッコミを入れる主人公のナレーションがとにかく笑えます。そして何より歴女である自分の強みを生かして活躍する姿はたくましい。
有名な武将ではなく、貧しい庶民の目線でこの時代が語られるところがとても新鮮です。細やかな生活描写、戦場の有り様、季節感、色んなものが丁寧に綴られ、その場の空気を読者と共有してくれます。
歴史ものは難しそうだと苦手意識を持つ人も多いかも知れませんが(自分もその一人でしたが)、この作品はそういった先入観を吹き飛ばしてくれます。
筆者の歴史愛がヒシヒシと伝わる愛情の籠った作品です。どうぞご一読ください。
いわゆる歴史小説とは、少し異なる。
ときは天正元年八月。近江、小谷城。歴史好きなら御存知の、信長と長政、最後の合戦の地である。
え?バリバリの歴史物でしょ?違うのである。主人公は信長でも長政でも、明智光秀でもない。彼女の名は『アメ』。問答無用の専業主婦。そして『オババ』。オババはアメの姑だ。現代から転生した、嫁と姑の冒険活劇なのである。
しかし、アメはただの『専業主婦』ではない。『歴女』、すなわち古今東西の叡知を頭に詰め込んだ物好きさまだ。そしてオババはハードボイルド感満載の、威風堂々とした女傑である。この二人が飛び込んだ、天正元年八月とは…
読み易く分かり易い文体。しかしその背後に潜む膨大なる含蓄。
だがその本質は。生きることを決して諦めず、どこまでも人を見詰め探求する『人間賛歌』。
むちゃくちゃ面白いですよっ!
オススメですっ!