総理大臣だけど、ここ数日、個人用のスマホに変なメールが次々と来てるんですが……
@HasumiChouji
総理大臣だけど、ここ数日、個人用のスマホに変なメールが次々と来てるんですが……
それは、衆議院の本会議中だった。しかも、TV中継が入っている日だった。
「議員の御指摘は当たらないと、先程から何度も……」
「総理、そう言われますが、先程から私の質問に何も答えていらっしゃいませんが……」
その時、私のスマホから脳天気な通知音が鳴り出した。その音をマイクが補足し、国会の……それも本会議室中に鳴り響いた。
衆議院のほぼ全議員に、ほぼ全閣僚、マスコミ、山程の傍聴者が居る中で……。
「あの……総理……」
「ええっと……」
「すいません……時計と速記を止めた方が良いでしょうか?」
議長が呆れたような声で、私と質問者にそう聞いてきた。
どうやら、何かの拍子にマナーモードを解除してしまっていたらしい。
「何なんだ一体?」
本会議中に届いたのは、妙なメールだった。
「アカウント・ロックを解除される場合は、以下のコードを打ち込んで下さい」
何だ、こりゃ?
「ねぇ、これ、何の事か判る?」
国会とぶら下りの記者会見が終った後、閣僚や党の役員に、そのメールを見せた。
全員、首を傾げていた。
ところが不審なメールは次々と届いた。
党の役員との会議している最中にブブー。「アカウント・ロックを解除される場合は、以下のコードを打ち込んで下さい」。
閣僚と打ち合わせをしている最中にブブー。「アカウント・ロックを解除される場合は、以下のコードを打ち込んで下さい」。
他の政党の党首との会談の最中にブブー。「アカウント・ロックを解除される場合は、以下のコードを打ち込んで下さい」。
経済界の大物と話をしてる最中にブブー。「アカウント・ロックを解除される場合は、以下のコードを打ち込んで下さい」。
TVのキー局や全国紙の重役と会食をしている最中にブブー。「アカウント・ロックを解除される場合は、以下のコードを打ち込んで下さい」。
何なんだ一体?
「で、○○県の知事選も近いけど、どうなってるの? SNSでの選挙活動とかは……」
「あの……SNSのアカウントがロックされてます」
10日以上経って、党内の打ち合わせで党のIT責任者がとんでもない事を言い出した?
「はぁ?」
「どうも……その……SNSの運営のサーバのAIが、党・内閣府・総理御自身、その他、政府・与党関係のSNSアカウントを……10個以上、不審なアカウントとして凍結したようです」
「一体、どう云う理由で?」
「それが、AIと云うのは、作った人間にとってさえも中身がブラックボックス化してしまってるようなので……理由が全く判らないようで……」
「凍結解除してもらえないの?」
「はい、SNSの画面から、ある数値を入力すれば、凍結はすぐに解除されます」
「どう云う数字?」
「あの……総理の個人メール宛てに、その数字が送られたそうで……」
「まさか、ここ十何日か『アカウント・ロックを解除される場合はどうのこうの』って変なメールが来てたけど……まさか、それ?」
「ええ、多分それです。そのメールを拝見出来ま……」
「おい。変なメールは全部完全に削除しろ、って言ったのは君だろ」
「え……と、まさか、私が以前教えたメールの完全削除の手順通りに……」
「うん、全部完全削除したけど」
党のIT責任者は……面白い顔になって、絶望の声を上げた。
総理大臣だけど、ここ数日、個人用のスマホに変なメールが次々と来てるんですが…… @HasumiChouji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます