困った娘【なずみのホラー便 第71弾】
なずみ智子
困った娘
とある夫婦の元に、娘が生まれた。娘は利発で明るくて可愛らしい子であったが、一つだけ困ったところがあった。
綺麗にアイロンがけされたワイシャツやブラウスを見ると、理由もなくグシャグシャにしてしまうのだ。衝動的な行動であるらしく、夫婦がいくら叱りつけても娘は同じことを繰り返した。
このこと以外は、いくら聞き分けが良くて可愛い娘とはいえ、出勤前の忙しい朝に無惨な状態にされたワイシャツもろもろを見ると、怒りなど通り越した熱い”何か”が湧き上がってくる。けれども夫婦は、とりわけ妻の方は”それ”を必死で堪え、溜息とともにアイロンのあて直しに努め続けた。
やがて娘も大人になり、人の妻となり母になった。娘の子供時代の奇行など、夫婦にとってはとうに過ぎ去った日々のことだ。
しかし、悲報がもたらされた。
娘が自分の子を、夫婦にとっての孫娘を、アイロンで撲殺したというのだ。
娘はこう供述した。
「私が前の晩までに、ちゃんとアイロンをあてていたワイシャツやブラウスを、いつも子どもがグシャグシャにしてしまうんです。何度叱っても、あの子は同じことを繰り返して……私だって、もう今朝はいろいろと限界だったんです」
――fin――
困った娘【なずみのホラー便 第71弾】 なずみ智子 @nazumi_tomoko
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