さてもここにございますは神通力なる御業が実在する、現代日本。
大病だ、怪我だとなれば縋られる使い手の一族は、しかし治療以外にも怪力俊足、果ては飛び道具にまでその力を使える超人の集団です。
そんな連中を相手どるは常人なれど、殺し屋・極道・啓蒙活動をする通り魔と、一癖二癖どころではない常軌〝逸〟した『逸般人』達!
いざ戦いとなれば状況は二転三転、一進一退、力技から搦め手の応酬、形勢逆転の嵐! 決着の時までどうなってしまうか判らない、ハラハラドキドキが持続し続けます。
全体としてユーモアに包まれ、殺伐としすぎないこの作品はまさしくエンタメ。
アドレナリンを求めるあなたにいかがでしょうか?
少し序章のネタバレを含みます。
現代の日本社会において公然と治癒の超常現象が認知されている世界観の説明がとても丁寧にされています。
その説明も物語の進行上必要が生じた時に必要な分だけなされるので読まされている感じがしません。
パラリンピックの選手が治療を受けたことで次期はオリンピックに出場できるようになったとして、治癒能力が眉唾物ではなかったと証明されたとするエピソードがあります。
ドーピングに厳しいオリンピックが元パラリンピックの選手の出場を認めたとすることで、治癒能力が科学的にも認められていると上手に、なおかつ分かり易く表現されていると感じました。
他にも丁寧だと感じたのは治癒能力が認められた後の社会への影響です。治療を求めて殺到する人々、受け入れに困る集落、それを商業化する企業、平等化のために動く国。実社会に治癒能力が実在したら起こると想定できる社会への影響まで描かれているので、日本における超常現象であっても程よく調和して受け入れることができました。
これぞ魔術と科学の正しい交差なのではないかと思います。魔術と自然科学の交差を描く作品はたまにありますが、人文科学まで交差させるとは感服致しました。
神通力! このワードに引かれませんか?
なんだか不思議な力を感じさせるのに世界を救いつつも掻き乱す。相反するワードが混在するとても気になるタイトルです。
この物語は現代社会にリアルに魔法が存在するお話なのですがその人間離れした力で仲間の危機を救い大きな陰謀に巻き込まれていきます。
その力故に強いのはもちろんなんですが、その……言動がヤバイときがチラホラあるんですよね。
だけどこのヤバイときこそが本当に面白い!!
それとエピソードタイトルをその回で回収していくのですがこれがまた面白いんです。
『知っておくと便利~裏技』シリーズは特にお気に入りです。
出来ればやってみようかって思います。
まあ出来ませんけど……
最後にもう1つ魅力を上げるなら魅力的な敵の存在でしょう。謎の力+秘密の組織+陰謀+一般人に見えて力を持つ主人公にそれを取り巻く個性的な仲間達。
これに魅力的な敵が加われば面白くない訳がないです!
このハイテンポな掛け合いと展開!これは読んでみるしかないです。ハマること間違いないです。