美しく儚げな世界観の中、リアリティのあるキャラクター達が織り成す人間劇。
そこから生まれる暗い感情や醜い心たち。
様々な要素が混じり合い、やがて一つ終わりに辿り着く。
そのゴール地点で待ち構えているのが、物語の主人公にして大きな闇を抱えている青年です。
彼は隠されてた匣(はこ)を開く。
それは客人の為であり、己の悲願の為であり、そして物語を終わらせる為でもある。
読みやすい文体、精密に織り成されたストーリー、そして現実に生きているかのような登場人物たちの葛藤。
正統派で実力のある作者が描写する世界は圧巻です。
つい先を読みたくなってしまう魅力に溢れた作品でした。
この作品は章ごとの表のシナリオとともに、背景でも別のお話が進む構成を使われて書かれていて、
メッセージ性のある表シナリオ、ミステリー系として考察ができる構成となっている裏のシナリオ、二つの側面で楽しめる内容となっています。
この作品の工夫点に感じる部分は主要人物が中心の物語ではなく、『救いが必要な人』との関わりの中で、断片的に裏のシナリオの全貌が見えてくるといった表現や、
タイトルテーマにある『匣』を聞き馴染みのある『箱』と照らし合わせて、異能を作ってあり、コンセプトとしても面白いと思いました。
『学校の噂』『林の奥の住人』『記憶や感情を代償にした取引』といった要素を含んだ作品ですので、興味が沸いた方は是非ご一読ください。
2つのシナリオをじっくり読むために私は2週ほど読ませていただきました、複雑な物語の動線ながら、一気に全てが繋がる感じは『おお~』っとなったので、
私の評価は星3で入れさせていただきました♪