生きた証【なずみのホラー便 第70弾】
なずみ智子
生きた証
若き天才科学者は、とある大富豪よりクローン人間製造の依頼を受けた。
まずは一体のクローン製造に成功した科学者であるが、大富豪は「たった一体で足りるものか。金は幾らでも払うから、私がいいというまで、私のクローン人間を造り続けてくれないかね?」とのことであった。
理由を聞けば、大富豪は現在、自伝を執筆中だという。
自身の輝かしく栄光に満ちた人生を一冊の本にまとめるとのことで、相当な頁数を要する分厚い自伝になりそうだとも。
科学者は言った。
「なるほど。自伝のご執筆に集中されたいがため、ご自身に代わって他のことをするクローン人間をご所望であったのですね」
それを聞いた大富豪は、呆れたように首を横に振った。
「この私がそんな陳腐な理由で、クローン人間を望んだと思うのかね? 世に生きた証を”そのまま”残したいがために、私は自伝を執筆しているのだよ。ここまで言えば、分かるだろう?」
なかなか答えが導き出せない若き科学者に、大富豪は溜息をついた。
「君は科学のお勉強はできても、頭の回転と歴史の知識はいまひとつのようだね……”人皮装丁本”という言葉を聞いたことはないのかね?」
――fin――
生きた証【なずみのホラー便 第70弾】 なずみ智子 @nazumi_tomoko
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