「文章で景色を描く」とは。『あなたが見た情景』のこと

ななくさつゆり

《「文章で景色を描く」とは。『あなたが見た情景』のこと》

 こんにちは。ななくさつゆりです。

 珍しく、小説ではなく、つらつらと記事的な文章を書いています。


 カクヨムで掲載している掌編小説集『あなたが見た情景』や、歴史短編小説『Lsbd:天正十五年の博多 《砂浜に町を描く男》』など、日々レビューや応援コメントを頂き、大変ありがたく思います。


・目の前の景色を眺めるように情景が思い浮かぶ文章。

『あなたが見た情景』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054893402030


・当時の博多という町の在り様を描きつつ、その時代の先陣を切ってひた走る者達がどのような思いで「町割り」に臨んでいったのかという情景を描いた歴史短編。

『Lsbd:天正十五年の博多 《砂浜に町を描く男》』

https://kakuyomu.jp/works/16816700428214510140


 で、今回の話ですが、もともとはカクヨムの近況ノートに日記として書こうとしていたものです。それが、書いているうちになんだか長文になってしまったので、いっそのことと思い、1本の記事にしてしまいました。



 最近、「つゆりさんの文章って読みやすいですね」や「情景が浮かぶようです」という大変ありがたいお言葉を頂けるようになりました。本当にうれしいことです。

 日々お読みくださっている皆様には本当に感謝しかございません。


 そういったお言葉を頂くなか、プロフィール欄に書いていることで、たまに尋ねられることがあります。

 それはなにかというと、

「プロフにある『文章で景色を描いている』って、要するにどういうことですか?」

 と、いうことです。


 そんな前段を踏まえて、今回の表題の話。

「文章で景色を描く」って、なんなのか。つまり私は、いったい何をしたいのか。

 それをサクッと書いていきます。



 さっそくですが、私は絵が下手です。

 そして、今の時代は「絵になっているもの」を求めてきます。


「絵になっているもの」とは、つまるところ目に見えてわかりやすい情報です。

 さっと受け取って、さっと感じて、さっと次にいける。そんな情報のことです。

 それなのに自分は、絵の表現よりも字の表現に走った人間でした。


 それを承知の上でなにかを書いていくうちにふと思い当たることがあり、はじめたのが今カクヨムで連載している『あなたが見た情景』です。

 書き手は「私」であるのに、タイトルは『あなたが見た情景』。これはいったいどういうことだろう。ということをこれから書きます。


「私」はいま、日々なにがしかのことを書いています。

 私は書き手なので、自分が書いたことが相手に伝わっていくことを祈りながら書いているわけです。情景もそのひとつ。ですが、情景描写とは結局、私が書いたものを通じて、「あなた」が思い描くものなのではないか。文章表現について、私はそう思っているのです。


 情景とはつまり、読んでくださる「あなた」が、頭のなかで本文にある「情景の要素」を拾い集めながら、思い描いていくものだろう。何度も書いていくうちに、いつしかそのように思うようになったのです。

 それなら絵が描けない自分でも、相手の頭のなかに情景を残すことができそうだ。私が考えたのはそんなことでした。

 それで浮かんだタイトルが、『あなたが見た情景』。



 自分が絵を描けなくても、相手の脳みそに思い描いてもらうことはできる。



 結局、世のすべては脳がつくる世界なんです。

 読み手のアタマの中で「絵になっている」情景は、書いた私がなんと言おうと読み手の中に存在する真実なんです。自分が書き記す情景と、相手が脳の中で描く情景が、委細すべて一致しているかなんて、意識を推し測る指標がない現代では、まだわかりっこありません。

 それでも、自分が記した情景と相手が思い描いた情景が共振しあい、人はそれを持ち寄って語ることができます。もしかしたら小説なら、そうした表現ができるかもしれない。


それなら、字が絵の世界に介在する余地はある。


そう思いました。

私は常に、そのための方法を探しています。


私の思う「文章で景色を描いている」とは、そういうことなんです。



って話を、つらつらと近況ノートに書く予定でした。

なんならTwitterの日記で140字以内に書く予定でした。

文字数は膨らむものです。


おかげさまで、『あなたが見た情景』は1年10か月に渡って連載し、ぶじひとつの節目を迎えることができました。『Lsbd:天正十五年の博多』をはじめ、様々な情景を彷彿とさせる物語を今後も書いてまいります。


どうか、引き続きお付き合いくださいませ。

ありがとうございました。

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