ヤマ野辺の待ち人

作者 美木間

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★★★ Excellent!!!

近いようで遠い場所。遠いようで近い心。
深い緑に囲まれたカフェにはお気に入りの蔵書。
雑踏から透明感のある空気を求めに来る孫娘。
セピア色の大切な思い出を、当時と同い年くらいの孫に受け継ぐ祖母。

カウンターの小さな傷や、温かみのある白熱灯の灯り、木枠の本棚、白い陶器のシュガーポット、小さなグラスに挿した名も知らぬ野辺の花が、描かれてもいないのに目の前にありありと浮かんで来て、行間から漂ってくるコーヒーの香りとともに脳内を占拠する。

週末にでも行ってみようか。

★★★ Excellent!!!

人の手で作られた自然に囲まれた、人の手で作られた町。
それが武蔵野。
キャンパスや図書館が並ぶ杜の街に、祖母のブックカフェがあった。

濃いコーヒーの香り、微かに交じる古い紙のにおい。
そんなブックカフェで祖母から依頼されたこと。
――待ち人をお願いするよ。
主人公は待つ人になることを決意する。

時間に追われる現実を忘れたくなる作品。
読み終わると、自分も何かをゆっくりと待ちたくなるのが不思議だ。

★★★ Excellent!!!

たくさんの本と人が集まるブックカフェーー。
作者の鋭い視線の虜になりました。

世代が違う二人の青春時代と、二人それぞれの速さで過ぎゆく時間がほんのすこし淀んだ空間。
そこに漂う、ほんのり甘く苦いコーヒーの香りは、すべてを包み込んでくれるのでしょうね。
緑あふれる街のこのブックカフェに行ってみたくなりました。