『56』 ギブアップ



 俺は財布からなけなしの1万円をとりだした。

「わかりませんでした」

 門崎さんはため息をこぼした。

「はぁ、もうちょっと頑張ってくれるかと思ったけれど、根性無しだったようね。もうウチの事務所に来なくていいから、じゃあね」

 差し出した1万円を手で払いのけ、門崎さんはお会計をして、店から出て行った。




 エンドC

 ――――バッドエンド。


















 そうか、門崎さんは俺のやる気を見ていたのだ。

 たとえ真実にたどり着けなかったとしても、真実を追い求めることができるか。

 事件の大小は関係なく、この小さな事件を捜査することができるか。

 俺は、目の前に用意された最も卑劣で最も安価なゴールに手を伸ばしてしまった。


 時を戻すことができるのならば、やり直したい。

「いいよ。いくらだす?」

「へ?」

「いくらくれるの? そうしたら、時を戻してあげるよ」

 俺は財布の中をかき集めた。靴底から虎の子も取り出した。

「さ、三万三千四百七十二円、あります!! これが、全財産です!!」

「はいはい、まいどありー。じゃ、目を閉じて、十秒数えてから開けること。がんばってね」

 これが夢でないことを祈る!!

 俺は目を閉じた。



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【ゲームブック】ダンゴを食べたのはだれ? ぎざ @gizazig

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