死んだものたちが繰り広げる、生の饗宴

祖父とふたりで暮らす、高校生の良二。物語は深い霧におおわれたように、謎を秘めたまま進んでいきます。死んだはずのものが生者のように振る舞い、謎めいた(死ね)という呼びかけが通奏低音のように響きます。
物語にはいくつもの印象的な仕掛けが用意されていますが、個人的に印象深かったのは匂いです。いろいろな意味で生命に結びついたいくつもの匂いが物語に登場し、その多くは、どことなく重苦しい。まるで生命的なものを厭うようにさえ感じられるその描写は、生者と死者の交わる奇妙な饗宴をいろどります。

また、なんといってもあとがきのリドル解説がとても楽しい!
「なるほど」と思わせる仕掛けが惜しげもなく披露されていて、ものを書く上で参考になること間違いなし。たとえば線香を折る仕草の違いは一見些細なもののように思えるかもしれませんが、こういう下ごしらえがあるからこそ描写はいきいきと存在意義を確保すると思います。
ぜひ、リドル解説までも含んで楽しんでもらいたい作品でした。

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