物語は行く当てもなく、路頭に迷っているところから始まる。
身も心も疲れ、眠っていたところを青年に助けられる。この出会いが変わるきっかけとなる――
出会いは人を変えるといいます。言葉通り、物語の登場人物たちに変化が表れますが、それだけではありませんでした。
人のやさしさと強さにふれる温かい物語を読んでいるうちに、私自身にも変化が起きていて、出会う人にやさしくありたいという気持ちがわいていました。
ココロのエネルギーが足りないと感じていたら、ぜひ読んでみてください。人のやさしさにふれることができて、とても癒されます。
孤独な身となった主人公・陽人くんはさながら放り出された植物の種子のようです。
木工店を営む滝川さんの元へ導かれ、雨風に晒され流されてしまうことなく、静かに着生してゆきます。
だからといって、陽人くんは決してただ甘えるだけの寄生をするわけではなく、地に足をつけて自らの軸を立てようとする。
その過程で滝川さんが抱える影の正体を見つけ、向き合うべきものと対峙する勇気を与えてします。(影ができるのは太陽のせいですね)
陽人くんが滝川さんのようなどっしりとした大樹になってゆくのか、美しい花を咲かせる草木になるのか、それは読んだ方だけが想像することのできる未来なのでしょう。
特に太陽が恋しいこの時期、サンルームのようなこちらの作品にお邪魔してはいかがでしょうか。
職を失い路頭に迷っていた青年・陽人は、ぶっきらぼうだけれど不思議な魅力を持つ一人の男に拾われて、一緒に暮らすことになります。
そこで少しずつわかってくる、滝川という青年の人となり。考え方、生き方。
物を安易に捨てずに、大切に使い続けていく姿。
二人で進めていく日常の一コマ一コマは、どこをとっても穏やかで温かい。
木の温もりと、人との思い出、大切な繋がりをいつまでも大事にし続ける。
今の若者たちには珍しいんじゃないかとさえ思えるようなシーンがあふれています。
彼らと一緒にいれば、私たちも、いつでも優しい気持ちで毎日を過ごせそうです。
忙しい日々に見落としがちな、大切なものを失わないために。
滝川や陽人と一緒に、色んなものに目を向けて見ませんか。
きっと、心穏やかな時間をゆったりと過ごせるはずです。
しばらく会っていなかった誰かに、会いたくなるかもしれませんね。
読むと元気を貰える現代ドラマ。とにかく主人公の周囲が暖かく、まるで彼が光を集めているよう。陰鬱な描写も悲しい描写もあるけれど、それにより物語の光度が上がっているのが綺麗。
構成も分かりやすく、主人公の行動も素直。ハマってほしいところに、きちんとパーツがハマる感覚は癖になりそうです。抜きんでて『コレ!』というものをフィーチャーしているわけではありませんが、等分に分散された魅力が、それぞれにしっかり存在し、胸の奥がむずむずしました。過去より未来を見据えることが大切だと教えてくれる作品。
綺麗な心を思い出すためのアイテムを、皆さんも是非使ってください。
大切な人を亡くした心の深い傷をどう癒していくか。これは心の再生の物語です。
最愛の彼女を失った若者が、今度は彼女が教えてくれた優しさを、より若い男の子に与えられるようになる。絶望の中にいた男の子は彼に救われ、そして男の子を救うことで、心に痛みを抱えていた彼もまた立ち直っていく。
人は人に傷付くけれど、やはり人を助けるものは人を思う優しい気持ち。一つ一つのエピソードが温かくて、読者は自然と物語に自分も溶け込み、登場人物の気持ちに寄り添い共感します。
最後はとても明るいキラキラした光に包まれた終わり方で、作者様のお人柄がにじみでている素敵な物語です。