のぞみのかけらとは何か。

それを知った時、読者はゾクリとするだろう。

ツバメはオスが死んでしまうと、他のオスが雛を殺すらしい。自分の子孫を残すために。
オス猫も子猫を殺すことがある。それもまた自分の血を残すためだ。
動物は自分の子孫を残すこと、本能に忠実だと思う。

人間の場合は。
少子化が問題となっているとはいえ、子供を育てるには莫大なお金と労力がいる。
核家族化が、子供を持つことをますます困難にしていく。
自分だけで手いっぱいの生活や、不仲な両親のもとで育った記憶が、結婚や出産を遠ざけていく。原因はもっとたくさんあるだろう。
現代は、理性による家族計画というよりも、現実的に子供を育てられないのかもしれない。

本能と理性。
人間もまた、本能と理性の間で揺れる生き物だ。
主人公のトラウマ。それの及ぼす多大なる影響。
一見、どこにでもいるような主婦の内面にある、静かな狂気。
それが暴走してしまうのか。あんな時期もあったなと笑い話になるのかは、紙一重だ。

のぞみのかけら。
望みの欠片なのか、それとも……。
じわじわと心を浸食する、日常のなかのサスペンス。是非ともご堪能あれ!

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