第7話
歌は前と違い、不協和音で満たされていてどちらかと言うと悲鳴のようだった。
思わず耳を抑える。
しばらくして地震が収まり、歌も聞こえなくなった。
教室のざわめき、いやこの学校全体のざわめきが大きくなる。体育館からは、避難していた子供だろうか泣き声が聞こえる。
まだ最初の地震からあまり時間が経っていない。
ここにいる全員の心は多いに動揺していると思う。
自分だって、頭を働かせていないと何も出来ずただ恐れ慄く今の現状に耐えられないだろう。
腕を目に当て、深呼吸をする。
結局、できることはここで横になって寝るだけなんだろう。
変に騒ぐなんて輩も今はおらず、先程のざわめきは通り雨のように過ぎ去って消えていく。
明日を生きられるように。
それだけを祈って目をつぶった。
目が覚める。
自分はまだ生きている。そんなことに安心した。
余震は弱く、これによる被害は微々たるものらしい。
しかし、自分を含め被災者には恐怖を刻んだ。
まだ揺れるのかと。
緩慢に世界が動き出す。
教師が入ってくる。
「親御さんに会いたい人もいるだろう。深夜に余震もあった。しかし、行方不明者などの確認のために原則今いる避難場所から動くことは禁止されている」
皆の顔に少し不安が映る。
「君たちは子供じゃない。避難所には高齢な方々もいる。学校内で道を訪ねられたりしたら、きちんと答え、サポートするように。皆同様にこの状況に■■、、、えー、、、すまない、言語障害が私にも出ているようだ」
頭を押さえながら話す。
「とにかく、みな、きちんと考え行動するように。君たちの頭をきちんと使いなさい。後で退屈しないように図書室の本や、携帯の充電ケーブルなども持ってくる。また、何かあったら職員室や、体育館などの大人を呼ぶように」
そして、教師が帰っていく。
しばらく沈黙が場を支配する。
それからして、空元気で皆が話し始めた。
体育系男子達も同様。やっと、状況の重さに気づいたのだろう。
スマホが振動する。
『地震の時歌なんて聞こえた?何か甲高い声は聞こえたけど』
歌が聞こえてない。
何かただの地震じゃない気がし始めた。
■
『政府により、地震の避難所に徐々に自衛隊が到着しつつあります。また、行方不明者は○○人にのぼり
死者も――』
あなたに気持ちが伝えたくて 林藤 凛 @rin_maigo
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