亡くなった相棒の代理(連帯保証人)として異世界に召喚された男が、「始元の大魔導師」として滅びに瀕した世界を救う姿を描いたハイ・ファンタジー。
魔素の奔流により地表の大半を焼き尽くされ、ごく僅かに残った退避施設により生きながらえていた世界に「始元の大魔導師」として召喚された男が、自身の電気工事士としての技と現世の知識を動員して魔素の奔流を制御し、人々の生活を改善してゆく。
現世の知識を異世界で活用するのはよくある展開だけど、魔術(魔素)を電気に置き換えることで電気工事士の知識を活かすというあたりはかなり斬新に感じた。話のテンポもよく、バラエティーに富んだ登場人物たちも魅力的なのでかなり楽しめた。
いわゆる異世界召喚――転生ではなく、転移から始まる物語。
世界は宇宙的自然災害によって、もはや滅びる寸前。そんなところに、なぜか召喚されてしまった主人公。
ファンタジーにありがちなスキルもタレントもない、ただの電気工事士としての知識と技術――正真正銘、人類が磨き上げてきた、科学という本物の「技術(スキル)」を応用して世界を救うお話です。
魔法的な現象を、科学の力でねじ伏せ、取り込むことで、「電池」で「魔力」を補充する魔法使いが誕生し、ゴジ……水爆怪獣や、ガメ……火吹き巨大亀が敵軍をなぎはらう……!?
ヒロインはつんけんしつつも愛らしく、女性経験のない主人公は振り回されつつも助けられ、少しずつ歩み寄っていく描写にも注目です。
この物語、『異世界召喚』モノとしての利点を尽く利用している。それは何か?
そして、この物語、『異世界召喚』モノの定石を尽く使わない。それは何故か?
この、ちょっと? いえ、かなり変わった超長編異世界ファンタジーのおもしろさは、ここにあると思うのです。
それは、この物語ほど、ご都合主義が素敵に納得できることが珍しい。使える知識も経験も総動員。しかし、大魔導師として召喚されながら魔法を使わない主人公は、どう見ても脱テンプレ。
更に、電気を知らなくても楽しく読めるのは、理科を司るこの作家さまの秀逸な文章によるのかもしれません。とにかくおもしろい。
始原の大魔導師として召喚された、この主人公。天災に喘ぐこの小さな国を、持ち前の電気の技術で救えるのだろうか……。
魔法の世界で、魔法を使わずとも、国は、人との繋がりは、発展していくのだろうか……。
こころ踊る、胸が高鳴るとは、この物語にこそ当てはまるのかもしれませんよ。
第一章「召喚、最初の30日」読了後のレビューです!
検索→電気工事士とは?
そう、私達が普段使っている「電気設備」を支えるお仕事です。
地震や台風などの災害の時なんかは修羅場と聞くくらい凄く大変なお仕事とだけ知識としてはありましたが、果たしてそれがどう異世界と絡むのか?
とても気になるタイトルから、リアリティのある導入で物語が始まります。
作者様は、その手の知識が半端じゃなく、そして文章力もあり、とても読者を飽きさせずに読ませる力がとてもあるのだと感じました。
魔法と科学、そして世界観にもこだわりがあって、闇から光を届けたいというそんな想いがありそうな、読者の想像力を掻きたてるんです!
キャラクターも魅力的ですが、やはり私は主人公が好きですね。
異色の組み合わせの気がして、相当はまっているのは、素晴らしい!
ぜひ、ご覧ください!!
しがない電気工事士の鳴滝が異世界に召喚され目にしたのは、宇宙から降りそそぐ魔素のレーザーによって大地が焼かれ、文明が崩壊し、食料も燃料も資源もなく、わずかな土地で人々が身を寄せ合って暮らす悲惨な光景だった。
そんな滅亡寸前の状況下でも絶望せずに生きる人間の逞しさに魅せられる。自分の寿命を削って召喚魔法を使ったヒロインのルイーザをはじめ、みんな誰かのために自分を犠牲にして必死に助け合って暮らす姿が痛々しくも、純粋で美しいのだ。人間不信でコミュ障だった鳴滝も、素朴で人の良い彼らと接するうちに次第に心を寄せて人として成長していくところも微笑ましい。
古代の魔術師が残した魔術装置を調べ、魔素が電気と似た性質を持つことを突き止めていく、魔法を科学的に解釈した世界観も独特で興味深い。ソーラー発電のように魔素の力を社会に活かすべく、鳴滝の号令の元で国家を上げての大事業が始動する!
犠牲者なしで世界は救えるのか!? 暗闇に希望の光を灯す電気工事士の意地を見届けろ!
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)
まず前提として、この作品は非常に文章力が高いです。
故に「電気工事士?理系知識ないからしんどいかなぁ……」と思わせない充実した電気についての補足説明があります。理系ならまず問題なし、文系の人も電気の魅力を存分に楽しめる作品です。
世界観としては、お決まりの魔法をしっかりと周到しつつも作者なりの解釈を揚言できているところが他作品とは一線を異なっています。
また、電気だけでなく主人公や登場人物のバックボーンが重厚です。転生する前はどのような生活を送っていたのかをしっかりと表現しています。
転生後に出会うキャラクターはその世界で生きるキャラクターとしての要素が際立っているのが魅力的ですね。
これから物語がどのように進んでいくのか非常に楽しみな作品です。