第3話「ライフハッカーシゲキ現る」
新型ウイルス。この言葉が世間で当たり前になり、世界の改変が迫られるようになった。
ビジネス書にある、新しい時代に向けて人は考え方を変えなければいけない、という状況がいきなりやってきてすべての人に試練が課されているようだ。
「おい!・・・おいおいおい、新型ってのはなぁ、モビルスーツに使う言葉なんだよ」
マスクをして自転車に乗り銀行へ行く。
昔から月々ボランティア団体への寄付いた。そのカード引き落としがあり、残高不足でカードが止まる度にため息が出た。通帳に記帳される寄付の引き落とし。
「自己満足? それとも罪の償い」
私、水島義男は夢追い貧乏である。
そうして、いつからか借金をするようになった。こうなってくると、借りた金で寄付していることになる。私はいったい何がしたいのだろう。
「偽善者、という言葉では物足りない。超(スーパー)偽善者だ」
ブログに愚痴を書いた。
こうしてブログなんて書いているとシゲキがすぐに電話をかけてくる。
これはYouTubeを始める少しだけ前の話。
「水島さん、また誰も読まないブログを書いて時間を浪費しとる。ブログは愚痴の掃きだめやないんです」
そんなことはわかっている。
「ブログってのは検索した人が知りたい情報。知らない情報。読者のためにそれを見て、調べて、提供するサービスなんや」
あー、そんなことはわかりきっている。
一日三冊ビジネス書を読み、40歳を過ぎた自分の人生を見つめて、それを変えることを目指して半年が経つ。もう、筋トレなら目に見えて成果があるはずだ。
この福ヶ迫茂樹という男。「ライフハッカーシゲキ」として一時は世間で知らない人はいないくらいの有名人だった。不祥事に巻き込まれて失脚してから一切活動を辞めて隠遁している。シゲキが無名のころには一緒に遊んだ。久々に連絡が来たと思ったら、メールや電話で私にダメ出しをしてくる。
「時間も金もいつまでもない。そないに苦しい暮らしなら逃げ出しぃや。なんでそこに留まるん?」
「そんな簡単に捨てられないの。俺にも立場があり、責任がある」
「いつもそんな言い訳して、苦しんで。水島さん、死んでしまいそうや・・・死ぬんなら逃げや」
ちょうど今朝読んだビジネス書にも同じことが書いてあった。正確には読んだ、のではなく聴いたのであり、本の朗読をスマホで聴ける月額サービスである。
弱い立場の人間はいつでも逃げる選択肢があることを知って、全力でそこから逃げるべきだ、という。
「YouTube・・・」
「は?」
「YouTubeだよ!…YouTuberになるんだ」
「なに言いだすんや、水島さん。YouTubeなんか今から始めて何ができる? YouTubeナメたらあきませんよ。よっぽどの大きな作品が作れでもしなけりゃなんにもできない。例えば絵がめちゃくちゃうまい、細かーい作業を何日もかけて作った力作を上げる、とか。あんたにそんな技術ありまんのかいな。もうこないだオンラインサロン始める、いうてあれどないなったんすか」
「オンラインサロンは…、いったんお休みしてる」
オンラインサロン張り切って作ってみたものの、誰も入ってこなかった。ブログに貼り付けて毎日告知はしてみたものの、フェイスブックのグループ立ちあげのために義理で無料で入ってもらった友人一人、それだけであり、プラットフォームの表示では「0人」となっている。オンラインサロンとは有料のオンラインコミュニティであり、爆発的ブームになって立ち上げた人は多くいるがほとんど人が集まることなく失敗しているとても難しいものである。日本最大のオンラインサロンを運営する「トラえもん」が大活躍するのを見て、私の野望に確実に必要なものである、と確信し、どんな形でもいいから作ってみることにした。そうして出来たのが「最弱オンラインサロンは優しい世界の夢を見る」である。
「水島さん…。赤い彗星も、地に堕ちた…やな」
電話は切れた。しばらく見ないうちにあの男、成長してやがる。
俺は何をしてるんだ。俺はなにがしたいんだ。
次回!第四話「伝説の超YouTuber、大地に立つ」に続く
「伝説の超YouTuberはコスプレ革命家」~もしも40歳越え最弱YouTuberが「もしドラ」3回読み返し「オンラインサロン」7股してコスプレ革命家として世界を変えたら~ ウェルダン穂積 @welldoneh
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。「伝説の超YouTuberはコスプレ革命家」~もしも40歳越え最弱YouTuberが「もしドラ」3回読み返し「オンラインサロン」7股してコスプレ革命家として世界を変えたら~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます