第2話 丘品君と社会見学
教師「よっしゃ、これで提出された社会見学の感想用紙、全部確認できたで。肩こったわー」
教師(俺の名前は国語教師。片仁高等学校の先生であり、3年2組の担任をしてから1か月ほどにもなる)
教師(ちなみに生まれも育ちも関東だが、関西弁に憧れているため、こんな喋り方で話している)
教師(そんな俺は今、先日行われた社会見学の感想文をチェックしていた)
教師(高3の時期に社会見学など如何なものか。そんな反対意見もあったし、俺自身もそう思うのだが、生徒からは好評らしく、今年も行われたのだ)
教師「さーてと、次の仕事は……って、また感想文落ちとるわ。あかんなー、またうっかりしてたんやな、しっかりせい自分!」(自分の頬を叩きながら)
教師「えーとそれでこいつの名前は……丘品緒所。またあいつかいな! 先日の一件以来ずっと見とるけど、何も反応なしやから夢でも見たんかと思ってたわ……」
教師「まあ、ええわ。ともあれ感想文には何て書いたんやろか……?」
丘品『今日の社会見学は私にとって、とても有意義でした。現場で働いている人を見て、ああ、これが社会なんだ、大人なんだと感じたからです』
教師「ええこと書くやん。そやそや、そうやって働いて、社会に役立っていることを感じながら生きる。それが人生ってもんなんやで」
丘品『少額の金銭を得るために自由を殺す愚かさとせせこましさが痛烈に身に
教師「全然違うー! いや、見方を変えればそういう面もないではないけども! でもそれが社会なんや!」
丘品『だから決めました。私は将来絶対そうはならない。社長になって従業員をこき使い倒してやると。そして札束の風呂の中で金髪のチャンネーを抱くと』
教師「全てが古いわ! 詐欺の広告でさえやらんわこんなの! ちゅうかそんな人間に誰がついてくるかい!」
丘品『その代わり休暇と給料はきっちり出します。週休2日、初任給手取り25万、有給あり残業代出します』
教師「まさかのホワイト!? もしかしたら教員よりも待遇ええんとちゃうかこれ!?」
丘品『仕事内容は蟹工船に乗ってもらいます』
教師「プロレタリア文学―! どんな条件も空手形にしかならへん!」
丘品『安心してください、昼休みは取ります。豪華なお魚料理の
教師「船の上での昼休みとか、誰が喜ぶかそんなん! しかも絶対自給自足やろこの感じやと!」
丘品『ちなみに先生が来てくれた場合、面接や書類選考なしで通してあげます。そしてその日から働いてもらいます』
教師「絶対嫌や! ブラックブラック言われてるけど、教員の方がなんぼかええわ!」
丘品『大丈夫です。先生を蟹漁で働かせるなんてそんなことはしません。もっと別の仕事をしてもらいます』
教師「あれ? そうなん? ってことは操舵手とかなんかか? でも俺船舶の免許とか持ってへんぞ?」
丘品『海が荒れたときに飛び込んで鎮めるお仕事をお願いします』
教師「人身御供!? 今どきそんなん信じる奴がおるか! おらんわ!」
丘品『古から伝わる海の神を鎮める方法ですよ? それを愚弄するんですか? 天罰が下りますよ? まあ私は信じていませんが』
教師「だったらなおさらすな! というか超今更やけど、先読みされまくってた! 超能力者かほんまに!」
丘品『超能力何かじゃありません。24時間365日先生を見ている私には、次にどんな行動するのか分かるのです。つまり私は名探偵なんです』
教師「何がどうしてつまりなのかさっぱり分からんわ! そもそも法律違反やろが!」
丘品『犯罪じゃないですよ。法律は人間が作ったものですよ? つまり私には適用されません』
教師「え……? どういうことや……?」
丘品『そもそも24時間365日他人を見るなんて出来ますか? 仮に出来たとして、そんな自分が誰からも見られていないなんて、あり得ますか?』
教師「た、確かにそうや。絶対誰かしら意識するはずや……でもそんなことないなんて……」
丘品『そう、つまり私は、人間ではない……幽霊……先生にしか見えないし、今も先生を見ているのです……』
教師「う、嘘や! そんな訳あらへん! 幽霊なんてありえへん!」
丘品『ほら、今も先生の後ろから……そっとドアを開けて……』
教師「う、うわあああああああ!」
教師(俺は悲鳴をあげながら、後ろを振り向いた! そこには……)
教師(何もなかった)
丘品『やーい、引っ掛かりましたねー! そんなんあるわけ無いでしょう。ただ気配を消すのがうまいだけですよーだ!』
教師「めっちゃ腹立つわこいつ!」
丘品くんと国語先生 狼煙 @beacon
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