・大石内蔵助

 分からぬ。


 これが仕官に繋がるであろうか。


 分からぬ。


 これが正しいとされるであろうか。


 分からぬ。


 正しいとされるとしてもその評が何時の世まで続くであろうか。


 分からぬ。


 罪に問われるであろうか。


 分からぬ。


 切腹する事になるであろうか。


 分からぬ。


 これは果たしてすべき事であったろうか。


 分からぬ。


 これは己の意思でした事であろうか。


 分からぬ。


 すべきではという流れに流された結果であろうか。


 分からぬ。


 殿の行いが正しいか。間違っているか。殿の振る舞いが憎いか。


 分からぬ。


 吉良が憎いか。


 分からぬ。


 だが……


 そういうもの、ではないか?


 人というものは。


 先程まで戦っていた清水一学も、戦って死ぬのが怖いのか、唯生まれて唯死ぬ前に戦って名を残せる事に喜んでいるのか、判然とせぬ表情をしていたように見えた。それが正しく一学の心であったかも分からぬが……


 だが、そういうものであり、こういうものではないか?人というものは。


 こうなるものなのだとそれでも言おう。こう、の中身の詳細を言える訳では無いが、こうなることはあるし、何時の世でもありうる事なのだと。


 人とは愚かなものなのです、吉良殿。


 故に、お覚悟を。

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