お砂糖、スパイス、カラテがいっぱい!

Q. ロリータカラテって何でできてるの?
A. タイトル通りです。

もっと言えば、カワイイと百合、それから暴力。
登場人物達が身を置くのは全身のカワイイ細胞を漲らして戦う格闘技・カワイイカラテの世界。主人公にして金髪の素封家令嬢・千条院 星衣羅は弱冠九歳、ビューティー・ロリータカラテの使い手です。これだけでワクワクしてきたでしょう? 他にも魔訶不思議で強烈なカワイイカラテの使い手が登場し、そして恐るべき敵――衝撃的な――が襲来します。敵との熾烈な戦いの中で問われる『カワイイ』とは何か、振るわれる拳の行く先は――と言うのが本筋。

一押しのポイントは、主人公・星衣羅とその幼馴染・葉湖の交流です。金髪縦ロールながらも心優しい星衣羅様と青髪おかっぱボクっ娘(注)で凛々しくもひょうきんな葉湖さん。作中で太陽と虹に例えられる二人は無二の存在でお互い尊敬しあっています。小学生ですので「微笑ましいものだ」と思いきや、距離をぐっと縮めてあっと驚かされますし、離れてしまってからの切なさも言い知れぬものがあります。そして、『虹は太陽が無いと見られない』もの――。白日の下、二人の秘めていた思いが、感情がうねりとなってぶつかりあう! 設定やバトルで読者を圧倒する勢いだけでなく、人間関係の繊細さをも描ける作者様の実力がいかんなく発揮された本作の白眉です。
注:ボクっ娘が出るというだけで本作が必読だということがよくわかりますね。

見どころは他にもたくさん。尖ったサブキャラクター達や、ユーモラスかつ盛り上がりのあるバトル描写、カワイイという重大なテーマと正面から向き合ったドラマ等々。「キレイはキタナイ、キタナイはキレイ」とは戯曲『マクベス』の魔女の台詞で、公正と不実の表裏一体や主役の栄光と破滅を暗示した名句ですが、翻ってロリータカラテにおけるカワイイの裏とは、この物語の結末とは……。気になる方はぜひ、カワイイ細胞をきゅんきゅんさせながら読んでみてください!

その他のおすすめレビュー

しのびかに黒髪の子の泣く音きこゆるさんの他のおすすめレビュー83