二人の間にだけ、ゆっくりとした時間が流れています。

読み終わった後の(いい意味で)ダメージが大きくて、すぐにレビューを書き始めることができませんでした。

人間のヒカリと、単眼のアンドロイド・ヒトミの二人が荒廃した世界を旅していくお話。

物語の最初の方、「がっこう」でヒトミが語る非ユークリッド幾何学が示す空間の歪みのように、荒廃した世界の中で、二人の世界だけが優しくゆったりと流れています。

ゆったりした世界を作りあげている、滔々と流れるような文体が心地よく、読み手は自然体のまま物語に入っていけます。
終盤に至るにつれ物語はドラマチックに展開していくのですが、そこでも文体の優しさを保ち続ける作者様の手腕が見事。
その為か終盤の展開の(二度目ですが、本当にいい意味で)ダメージが大きい。

また、本編では多くは語られませんが、ヒカリとヒトミの名前や、「がっこう」での小話など、考察を深められる要素が多く、かなり作りこまれた作品です。